Daily Archives: 2012 年 1 月 15 日

本『銃・病原菌・鉄』Jared Diamond 訳:倉骨彰~その2~

1/16 一部修正(コメント欄参照)

 いきなり結論からくる本です。

 現代世界の不均衡を生みだした直接の要因は、西暦1500年時点における技術や政治構造の各大陸間の格差である。(中略)紀元前1万1000年、最終氷河期が終わった時点では、世界の各大陸に分散していた人類はみな狩猟採集生活を送っていた。(P20)
 なぜ、人類社会の歴史は、それぞれの大陸によってかくも異なる経路をたどって発展したのだろうか?人類社会の歴史の各大陸ごとの異なる展開こそ、人類史を大きく特徴づけるものであり、本書のテーマはそれを解することにある。(P21)

その答えは

 歴史は、異なる人びとによって異なる経路をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的名差異によるものではない(P35)

 豊かな人、貧しい人、世の格差は広がるばかり。メディアには豊かな国のその中でも豊かな人が、豊かになる方法をつらつらと語っておられる。その一方で一日1ドル以下で生活しているような、アフリカ諸国(エリトリア、ニジェール、エチオピア、マラウイ、シエラレオネ、リベリア、コンゴ、ブルンジ:社会実像データ図録2010年)の人たちは今飲む水を求めている。
 この差ってどこで生まれたのか。人類はそもそもアフリカから始まったはず。それがいつの間にかアフリカは欧米諸国に全く及ばないなんてことになっている。
 この差が生まれ始めたのは、発話ができるようになったと思われる5万年くらい前からといえるようだ。発話をし意思疎通を図るクロマニョン人が、ネアンデルタール人をことごとく廃絶する。ここまでは進化論の自然淘汰の話で十分理解できる。
 問題はその後、1万3000年前くらいから、遺伝子とは別の要因で人類同士の間で差がおき始める。すなわち銃であるとか、病気に対する免疫、製鉄技術等。じゃあ銃だ何だというものを扱えた民族と、扱えなかった民族の差はなんなのか。中国が前半よい感じだったのに、つい最近まで発展途上国であった原因はなんなのか。

 簡単に言ってしまえば、農耕や畜産の適した種がいたか、大陸が東西に広かったか南北に広かったか(東西が圧倒的に有利)どうか。この辺りがクリティカルな要因だったようで。 
 たまたま農耕や畜産に適した種に恵まれた民族は、畜産を行う中で病原菌の免疫を手に入れ、専門職を養えるようになり、文字や製鉄などの技術を手に入れ、政治を行えるようになり、そうでない国に対して圧倒的な力を得られるようになった。また東西に大陸が伸びているユーラシア大陸では気候や日照時間が似通っているため、農耕や畜産の伝達が早くより格差に差がついた。
 こー聞けばストンとくる言葉があるわけです。「南北問題」。
 少なくとも、「日本人は農耕民族だから」みたいな事を言うことがあるけれども、それは全く逆で農耕民族こそ世の制圧者でなのであります。

 また、西欧と東アジアの政治的な違いについては、海岸線の形で説明されています。中国は海岸線が滑らかで国家が分裂しにくく比較的まとまった政治形態で来た。それに比べ西欧は海岸線が複雑に入り組んでいるために、国が分裂しやすく多様性を認めやすい文化になっている。
 結果的に自由度の高い西欧は、弱肉強食文化でガスガス世界を食っていったが、中国は組織パワーで序盤はよかったが意思決定の難しさにより、西欧に差をつけられることになってしまった。

とまあそんなこんな » Read more…