SF『アド・バード』椎名誠

 みんな大好き?椎名誠。
 ウィキさんからあらすじをいただくとこんな感じ。

二十一市に住む青年、安東マサルとその弟菊丸は、行方不明となった父が生きていることを知り、マザーK市への旅へ出る。世界はターターとオットマンの両陣営による改造生物を使った広告戦争の結果、荒廃しており、市外を一歩出たところには、何もかも分解して土に変えてしまう科学合成虫ヒゾムシ、鉄を食いつくすワナナキ、触手を持った動く絨毯のような赤舌、そして鳥文字を作ったり人語を話す広告用の鳥アド・バードといった、珍妙不可思議な生物たちがうごめく危険な時代だった。道中で出会ったキンジョーという名の生体アンドロイド(ズルー)と共に、兄弟はマザーK市へ向かう。
Wikipedia

 文末の解説によると1987年くらいから始まった連載のようで。
 ファミコンができたのが1983年。ちなみにディズニーが日本にできたのも1983年。なんとなく、こんな本の想像が生まれてきたという時代にも納得できるような。

 マザーK市は、気持ちの悪い広告や不出来なロボットに支配されていて、ホテルに泊まると、蛇口をひねっても、寝ても覚めても、そこらじゅうで宣伝広告。お金を払えば消えるには消えるが・・・。現代のネットはそんな感じだけど、どうか現実には来ないでほしい。
 外に出れば、虫が編隊を組んで文字を表し広告になったり、鳥が肩に止まって広告ワードを連呼したり、サルがシンバル叩きながら行進したり。でもって、その広告のための生物改造が行き過ぎて・・・。まーこれも、人の集まる都会では、そんな感じになってるっちゃなってるか。
 で、ひとしきり社会情勢を見学すると、急に物語が生き物の思考の中に寄り道したりもする。蚊喰いという生き物の思考に入って、宣伝用に動かすための電波に操られる様なんかを、書いてしまうのが面白く、なんというかお茶目なところ。

 基本、この物語はめちゃめちゃ怖い(SF自体が怖いものかもしれないけど)。完全な人間は序盤を除けば、基本マサルと菊丸だけで、他にコミュニケーションをとる相手は、ロボットやロボット化されてしまった人間ばかり。脳髄だけ取り出してロボットになっていたり・・・。それでも、マサルは少なくとも孤独を感じるような描写は少なく。それなりにロボットとの生活も楽しんでいるように見える。んー何って人間が自分しかいなくても、ロボット相手でも、満足してしまう可能性を提示されていること自体が怖い。そーいや、OSに恋するなんて映画も最近あった。そんなの、自分の脳みそ信じられなくなっちまう。

 椎名誠が想像を始めてから少なくとも30年から40年はたったわけだけど。この本ほど広告戦争は激しく進んではいないようで少し安心。そしてこれからも、それほど広告戦争は進まない感じもする。
 この本には広告に対する恐怖が描かれていて、30年前同様に、いま生きる私も広告派手になると嫌だなーと思っていて。思ったより世の中は良心を多少は保ちながら進んでいるかも。とも思ったのでした。いや違うか、こんな表だって広告していないだけで、裏から裏からこっそり洗脳されているのかも。現代は誠ちゃんが想像していたよりも、もっと怖い世界かもね。

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