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『私の旧約聖書』色川 武大


 あけましておめでとうございます。
 抱負とかから入りたいところですが、さくっと書評(?)から。

 旧約聖書を筆者の解釈や人生経験を軽くちりばめながら解説した本。
 筆者は自閉症(自称)気味で、暗いんだけど、自分と重なる部分なども結構ある。
 どんどん旧約聖書の内容が頭の中に入ってくる。読みやすくて大変名著。

 

 まずもった感想は、旧約聖書は、道徳を蕩々と語った様な書物ではなく、「全然普通の物語じゃん」って事。
 例えば、筆者もお勧めの章「ヨブ記」なんかはお勧め。

 昔々あるところにヨブさんという品行方正な財産家がいました。
 平素から神を畏れ、悪には近づかない。神(イェホバ)さんとしても、文句なし。
 そんな中で、イェホバさんの所にサタンが来るなりこんなことを言いました(がっつり引用)

「誰も理由なしに神を畏れたりするものですか。
豊に暮らしているから貴方を大事にするんです。
逆に無一物になったら貴方を呪うでしょう」
 イェホバさんは、
そうかな、と思って、試しに、
ヨブの子女や財産を全て奪ってしまいます。

 ヲイヲイ…

 しかしソコは品行方正なヨブさん。
 地に平伏して「イェホバの御名は讃うべきかな」。
 実に謙虚に神への謙虚な気持ちを持ち続けます。
 これを受けてイェホバさん納得するか思ったら、さらにサタンに

「なぁに、人間はエゴイストだから、
自分の命さえあれば、持ち物なんか失ったって平気ですよ。
彼自身をいためつけてごらんなさい。
きっと貴方を呪います。」

等と言われ、いじめはエスカレート…。体中腫物だらけにされたり…。
 さすがに、ヨブさん耐えきれず
「何で罰をうけにゃいかんのや…」
 とイェホバさんにこぼすと、曰く「俺がこの世の全てを全部作ったんや、文句あるか」ってな事で逆ギレ。
 最終的にはヨブさんには財産とかは戻されてHappy Endらしいですが、なんともヨブさんが可哀想。

 

 旧約聖書についての引用ですが

 この書物の特徴は、私たちが概念として持っている様な道徳観がほとんどありません。
 ただ一点、神と人間との契約、これが根幹になっておりますから、双方が、つまり神も人間も、その契約を守っているかどうか、これが問題なのですが。人間は、神に対して違反し、その尊崇を捨て去ってはならない。それから、神も、人間と約束したことを履行しなくてはならない。もし忘れれば、神という存在もたちどころに無に帰してしまうのです。

 ちなみに神と人間の契約というのは、「わし(神)が言う場所に行って、わしを崇拝してくれ。そしたら幸せにしてやるよ。(ミムラ要約)」というようなもの。

 筆者は、神と人間を「対等」と言うことを言おうとしている様に見えるけど、どうみても不平等条約。
 不平等であろうがなんであろうが「契約書」が重要な意味を持つというのは、キリスト教社会の必然っぽいですな(今ググって見た)。
 また旧約聖書じっくり読んでみないといかん。結構物語としても面白いし、キリスト教社会の人達の考えの元が多少は理解できる気がした。amazonでなぜか価格が急騰してるねぇ。言ってもらえればかしまーす。