非営利活動をしようと思うなら、組織選択についていくつかの選択肢がある。
規模が小さいうちは不要かもしれないが
・寄付や助成金の増加
・資産の保有
・利益が出た
等ということになってくると、法人化が必要な場合もでてくると思う。
しかしながら、様々な制度改革があり、法人の選択肢も増えた。また制度も複雑になってきているのでまとめてみたい。想定は、特に組織も財産も持ち合わせていない個人が何人か集まって非営利活動をしている。というイメージ。
この前提で選択肢にあがるのは次の法人形態かなと思う。これらについてまとめてみる。
(なおNPO法については、平成24年1月1日施行分も反映させているつもりです。リンクには根拠法などへのリンクが入れてあります。)
- 一般社団法人
- 株式会社
- 特定非営利活動法人(NPO法人)
- 認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)
- 公益社団法人
他にも、一般財団法人、持分会社、社会福祉法人等の様々な可能性がある。
この中でも、認定NPO法人はNPO法人からの出世法人。公益社団法人は一般社団法人からの出世法人で、まずは、稚魚であるNPO法人なり、一般社団法人からのスタートとなります。ですので、この記事ではまずは、一般社団法人、NPO法人そして株式会社ついて簡単に説明して、認定NPO法人や公益社団法人は、次回にしたいと思います。
で、現れる次の表です。(この表がほしくて作った記事のようなものです。似たような表はあるのですが、一般社団が分けられていなかったり、税制上の比較が無かったり。ってなことで。)
一般社団法人 | NPO法人 | 株式会社 | |||
---|---|---|---|---|---|
税分類 | 右以外 | 共益 | 非営利徹底 | ||
根拠法 | 一般法人法 | NPO法 | 会社法 | ||
設立手続 | 登記 | 認証+登記 | 登記 | ||
主たる目的 | 制限なし | 共益目的 | 制限なし | 公益限定20分野 | 制限なし |
所轄+監督 | なし | 都道府県等 | なし | ||
設立にかかる期間 | 最短1日 | 約4ヶ月 | 最短1日 | ||
報告 | なし | 年1回 | なし | ||
法定設立費用 ・定款認証 ・登録免許税 |
・5万円 ・6万円 |
・0万円 ・0万円 |
・5万円 ・15万円 |
||
設立時 最低人員構成 |
社員2名 理事1名 |
社員2名 理事3名 |
社員10名 理事3名 監事1名 |
株主1名 取締役1名 |
|
剰余金の分配 | 原則不可 | 不可 | 不可 | 株主へ | |
残余財産の分配 | 定めなし | 公益法人等へ | 公益法人等へ | 株主へ | |
法人税 | 全所得課税 | 収益事業課税 | 収益事業課税 | 全所得課税 | |
消費税: 国等の特例 |
あり |
あり |
なし |
||
みなし譲渡非課税 | 後日 |
名前
宇多田林檎という名前の法人を作るとすると
一般社団法人 宇多田林檎
特定非営利活動法人 宇多田林檎
株式会社 宇多田林檎
などという名前になります。この付く名前によって、全く様相が変わってきてしまう。
どれを選ぶ?
ごちゃごちゃ書いていますが、正直上記表を眺める以前の問題として、NPO法人については4万社を軽く超え社会的な認知や信用も積みあがってきており、借入や補助金については一般社団等よりも有利かもしれません。
例えば「NPO法人 助成金」と検索すると、大量に助成金情報がでてくる。借入についても少しずつですが融資実績が積みあがっているようです。
日本政策金融公庫(略称:日本公庫)国民生活事業の平成23 年度NPO法人向け融資実績は、532 件(前年度比138.5%)、38 億円(前年度比139.2%)となり、件数・金額ともに5期連続の増加となりました。
日本公庫のNPO法人向け融資実績 5期連続増加(日本政策金融公庫ニュースリリース)
ただし、NPO法人は信用の裏返しとして縛りも大変きつい。「公益目的」であることが求められ、これは、構成員の利益のみになるような活動(共益的)な活動ではだめということであったりします。また、事業報告を求められる等、色々と制約があり、手間がかかる。
助成金等の助けをそこまで必要としないのであれば、柔軟な対応が出来るという意味で一般社団法人の選択もありなのではないかと。
また、通常の借入等はおそらく株式会社が有利であり、収益が求められるような事業を行うのであれば、株式会社もありなのだと思います。
以下表の中身について少し説明すると
共益型と非営利徹底型
一般社団法人には3種類の分類ができる。
共益型は、同窓会のような会員同士で利益を享受するような共益的な組織。イザ解散するときに残った財産の使い道も自由が効き、法人税の特例も受けられる。
非営利徹底型は、解散するときに財産が残っていれば国や公益法人などに差し出す必要がある。その代わり、どんな活動をしていても法人税の特例を受けられる。
収益事業課税と全所得課税
収益事業課税というのは、法人税法に定められる事業を行っている場合には課税されるが、そうでない事業については課税されない。全所得課税は、何をやっていても課税される。(赤字ならもちろん税金はかからない)
すべて課税されない事業であれば、法人税は課税されないので申告書を作る手間も省け楽。
全部課税される場合には、申告書を作るという大きな手間がかかり、黒字であれば税金がかかってくる。
課税されるものと、課税されないものが混じっている場合には、さらに結構な手間がかかる。
みなし譲渡非課税
後日
寄付した人の寄附金控除?
なお、これらの法人で寄付をしてもらっても、寄付した人には税制上のメリットは何も無い。
寄付した人にメリットのある法人になる(寄付を集めやすくする)ためには、認定NPO法人や公益社団法人等を目指す必要がある。
また今度、これらの上位概念である
公益社団法人、認定NPO法人を比較してみたいと思っているわけです。
(参考書籍)
・実務家のためのNPO法人の会計と税務/中田ちず子
・新公益法人の移行・再編・転換・設立ハンドブック/税理士法人高野総合会計事務所等
・基本民法/大村敦志
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