この島から最初に消え去ったものは何だったのだろうと、時々わたしは考える。
この小説の舞台となる島では様々なモノが消滅していく。例えば鳥が消滅する。消滅した後、空を飛ぶ鳥を見ても『鳥という言葉の意味も、鳥に対する感情も、鳥にまつわる記憶も、とにかくすべてを』失ってしまう。そして皆が存在することが耐えられずに鳥に関するモノを処分し始める。
バラ、写真、カレンダー様々なモノが消滅していく。
その一方で、消滅がおきない少数の人もいる。
この特別な人達は「秘密警察」にいつも手配されていて、見つかると引っ捕らえられてしまう(この島では記憶狩りという)。だからこの島では記憶を保持していられる人達は、隠れて過ごしている。
主人公のお嬢ちゃんは、その消滅がおきない男性R氏を、家の秘密部屋にかくまう。記憶を失っていく主人公と、記憶が残り続けるR氏の奇妙な生活が静かに繰り広げられる。
ちなみにお嬢ちゃんの職業は小説家。小説も消滅してしまうのだが・・・。
----------------------
例のごとくネタバレ嫌な人は以下みないように!
----------------------
この小説の中で、記憶を無くしていく主人公達は、「消滅」に対してさして恐怖もなく、「消滅」を受け入れていく。しかし、その主人公達の「記憶」を何とか呼び戻そうとR氏が必死になっている姿は見ていられない。こっちの世界でもよく見る光景じゃないか。
秘密警察という存在自体もかなり謎で興味深い。
完全な独裁組織であり、彼ら自体がなんのための記憶狩りをし、彼ら自体は消滅とどう向き合っているのか。
つい最近、「記憶力がないのが悔しい」なんて話をしていた。
この話をしたのは小説を読んでいる最中であったけど、間違いなく影響があったんだと思う。客観的に記憶が失われていく様を見るのは非常に怖いモノがある。
むっちゃこえーよこの小説。
最近のコメント