『できそこないの男たち』福岡伸一

amazonより

「生命の基本仕様」―それは女である。本来、すべての生物はまずメスとして発生する。メスは太くて強い縦糸であり、オスはそのメスの系譜を時々橋渡しし、細い横糸の役割を果たす“使い走り”に過ぎない―。分子生物学が明らかにした、男を男たらしめる「秘密の鍵」。SRY遺伝子の発見をめぐる、研究者たちの白熱したレースと駆け引きの息吹を伝えながら「女と男」の「本当の関係」に迫る、あざやかな考察。

 この本は2つの意味で面白いと思う。
●一つには、遺伝子から女性、男性が発生してくる過程が解るという科学的興味。
●もう一つには、遺伝子や性を巡っての成果を競い合う科学者のドラマ。
 この人の文章はほんに面白い。私的には後者が特に面白かった。

 最初は非常に高精度なレンズを作り、最初に精子を見つけたレーウェンフックの話から始まる。このおっさんが最初に精子をレンズを通して見たのは1677年。
 ちなみにフェルマーのおっさんが没したの1665年らしい。この時代は科学とかが急激に発展してる気配がしてワクワクする。

 次に1905年、ネッティー(米国)という女性がチャイロコメノゴミムシダマシという昆虫を解剖し、精子や卵子、体細胞をいろいろと観察していく中で、

メスの体細胞には20個の大きな染色体が存在する。オスの体細胞は19個の大きな染色体とひとつの小さな染色体が存在する.

 という事を見つけ、論文として発表する。
 この20個目(こやつらは少々数が少ない。)の大きい染色体と、小さい染色体が、オスとメスを分ける。そんな事を見つける。(X染色体,Y染色体)
ここまでたどり着くドラマを読むだけでもゾクゾクくる。

 そして一気に1900年代後半。
遺伝子が読まれる様になり、「オスを決定する遺伝子」を巡って競争が始まる。
そしてSRY遺伝子の話へと入っていく。



 ところで、遙か昔、地球ができて10億年ほどの時、地球上はメスばかりだったらしい。メスが単体でメスを産み繁殖していく。
しかし、これでは自分と同じ遺伝子を持ったメスしか生まれてこない。そんな中で、オスが活用されることになる。 自分の遺伝子と、他のメスの遺伝子を掛け合わせることによって、自分とは異なるメスを作ることができる。
 オスはそんなメスのための橋渡し役。
 ちなみにオスの作り方は簡単。アリマキという虫の場合、普通(メスの場合)二本ある染色体を一本だけで作ったら、オスになるとか。(えぇー)

 さらにオスに橋渡し役だけさせとくのじゃあもったいないので、食い物取りに行かせたりもさせてみよう。とか、言うことになり始めて、現在のオスに至るとか。福岡さんちょっと男可哀想過ぎやありませんかね。

 男性ホルモンの主成分であるテストステロンというものは、免役システムに抑制的に働くらしい。この結果、ほとんどの病気の死亡率が男性が女性を上回る。そして平均寿命はご存じの通り女性の方が長い。
ただし、女性の死因で男性をわずかに上回っているモノが一つある。それが「老衰」。

 とりあえず、生物学(?)的な立場では、オスは不完全なのである。メスの出来損ないなのである。と言うことらしい。
もちろん生き物として、また社会的に、優れているとか劣っているとか、幸せであるとか不幸であるとかいうのは別の話だが・・・。
女性のために働きましょう男性諸君(涙)

 ふう。良い本なのだけど。寂しくなる本でした。ちゃんちゃん。

Pages:
  1. おおー。読みたい。

  2. やいだ(みむら)

    おもろいぞー
    ぜひ読んで見るべし

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