Daily Archives: 2010 年 4 月 29 日

書籍『インパラの朝』中村安希

 ユーラシア大陸からアフリカ大陸まで2年で旅行した女性の話。

安希のレポート←本人さんのブログらしい。
この惑星-中村安希さんインタビュー←こんなんもあった

 米国のしかも大都会シカゴに数日滞在しただけの自分には想像もできないような世界を、この本により体験中。
 ちなみに著者は及川光博似の女性。寧ろ本人でも驚かない。かっこよい。本の中で「殴られた」とかいう描写が出てくると、思わず表紙を凝視してしまう。かっくよすぎです。
 本の中では、旅で出会う一人一人の顔が目に浮かぶ。ホモのおっちゃんや貧乏な人金持ちの欧米人。全体的に、テーマを捉えて読むよりは、一つの事実、というか自分で旅をしている気分で読む本だと思う。書き方もそうなっている。この記事を公開はするけど、以下読まずに、この本を読んで欲しいな。貸して欲しい人は言って頂戴。よろこんで。
 以下ここまで読んで心打たれた場面を。

ザンビア

 彼女がザンビアに入国し、写真を撮っていると「アフリカの貧しい姿を写した写真を撮って、帰って雑誌にでも載せるんだろう?」みたいないちゃモンを通行人につけられる。その人に対して彼女はこんな反論をする

「貧しい?あなたは身なりもちゃんとしていて、ご飯も普通に食べていて、それでもあなたは貧しいの?私はそうは思わない。私が知っている貧しい人は、ここではなくて道ばたにいる。今にも死にそうな人たちが、世界各地の道ばたで物乞いをして生きている。もしも私が貧しい人や寄付金を探しているのなら、クリスやあなたに会う前に、もっと別のインドやラオスや東京の公園へ直行するわ。住む家もご飯も家族もいない文字通り貧しい人たちを高架下に訪ねていって、日本で写真を撮らせてもらう。本当に貧しい人たちを」

 まずもって、日本人女性にこれだけ言われた通行人はちょっと可哀想だ(笑)
 彼女はここに来るまで、イラン、インド、パキスタン、イスラエル、ウガンダいろんな所を通ってきている。その彼女の中の貧困リストに、東京が堂々と上位に位置している。この事は結構衝撃だった。彼女曰く貧困は都市にあるそうだ。地域に行けばとりあえずはみんなご飯は食べていける。
 「多少の不便や空腹や病気の脅威があったとしても、子ども達はウガンダで『とても楽しげ』な一面を持ち、どうにか元気に生きてきた(P159)」。ウガンダの貧しい子どもがこういう状況の中、日本のホームレスはコンビニのゴミ箱を漁っている。
 どっちがどうといえるわけでは無いとしても、少なくとも日本人がテレビで貧しい外国人を見て「貧しくて可哀想だ」なんて言っている足元で、それと同等に酷い貧困がこの国にもある。

イラン

 イランで民間の人に手厚い施しを受け、「どこに凶悪なイランはあるのか?」という話をしていたときの会話

「もちろん、イラン国内にも宗教的な過激派や保守的な人もいるけれど、僕たち一般の大多数は、あまり宗教の束縛のない自由な社会を望んでいる。僕らの最大の関心事は、宗教より経済だ。普通の人が心配するのは、自分の学歴や仕事のことや、安定した生活を手に入れて、どうやって維持していくかということ(P106)」

 どうだろう。全然日本人と同じような事を言っているように見える。
 こーいった気持ちはニュースでは知り得ない。実際に体験するか、ながーい文章の中でそろっと入っているもんだ。ちなみに文章を読んでいるとアフリカ人は日本人とは思想が結構違う気がする(笑)

余談

フランスで働いたというブルキナファソ(西アフリカの国)の人曰く

「ヨーロッパでの生活は、とても苦しく貧しかったよ。フランスで生きていくためにはね、働かなくてはいけないんだと。毎日何時間も働いたって、生活費や家賃を支払うと、後には何も残らないんだ。友人や家族とリラックスして楽しむ時間も少なかった。だからね、僕にはこっちの生活がいい。ここではみんながのんびりしている。例えば仕事をしなくても、食事は毎日食べられるし、太陽の下でビールを飲んで、ゆったりと暮らしていけるんだ」

 といって、地元西アフリカへ戻ってきたそうだ。
 つい先日「シッコ」というマイケルムーアの映画で「フランスは労働時間も短くプライベートを大事にできる国だ!」みたいなすり込みを受けた直後である。悩ましい。「西アフリカ<フランス<日本」だとしたら、日本ってどんだけ。
 別に日本人が西アフリカの思想を取り入れる必要もないと思うけど、少なくとも先進国の人間が現地に行って「可哀想だ」と思うのは見当違いな事が相当にあるんだろうと思わせられる。
 あと、ついでに言えばベーシックインカムみたいなものがブルキナファソでは既に完成しているともいえるのではないか。

さてさて

 文章はあと50ページ。どんなことが書いてあるのだろうか。
 ちなみに全体的に男性としては女性に申し訳ない気分になるような内容でした。女性はすげーぞ。世界どこに行っても男が夢や名誉を求めふらついている横で女性が家事子育てをまじめにコツコツやっているのだ。頑張れ男。