『フェルマーの最終定理』サイモン・シン


fermat
この方程式はnが2より大きい場合には整数解をもたない。
「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」

 こんな事を17世紀に生きる一人の数学者フェルマーさん。こんなことを書き残しちゃったものだから。その後300年にわたってこの証明をすべく多くの天才数学者が挑戦し、膝をつくことになる。
 本の中は、このフェルマーの最終定理と言われる問題を通して、数学の歴史、数学を巡る人間ドラマ、そして証明を完成させた数学者ワイルズについて書いてある。
 半端なく面白い。少なくとも数学の証明を一度でも面白いと思ったことがある人なら、あるいはノンフィクション好きなら、はまるんじゃなかろうか。(内容はさして難しくない。)
 かなりお勧め。本屋へ直行すべし。

 以下備忘録。(なげーよ。それだけ感動箇所が多かった)
◎紀元前6世紀『ピュタゴラス』
 彼は「数」を信仰する宗教団体を作り、数がもつ性質、数同士の関係、数が作るパターンを研究した。ちなみに、無理数を信じなかったピュタゴラスは、無理数の存在をほのめかした弟子を殺したりもしている。まさに宗教だ。
 そのピュタゴラス教団は、入門を断られた青年に破壊される。

◎200~300年後
 その時の王プトレマイオス1世に対して人望のない(!)デメトリオスという人が、図書館を作るというアイディアをだし、エジプトに「アレクサンドリアの図書館」というものができることになる。そこに、多くの文章が写本され、蓄積された。
 その知識の中心で教鞭を取っていたのが、かの有名なエウクレイデス(ユークリッド)だった。
 その図書館の書物もイスラム教徒によって破棄されることとなる。その後千年西洋の数学は停滞する。
 この期間にインドで0が生まれたりもする。

◎なんだかんだで17世紀。フェルマーの時代になる。
 フェルマーは確率論と微積分の父でもある。
 確率論の始まりはフェルマーとパスカルの文通。
 ある男が「ポアン」というギャンブルをしていた。しかし、急用で中断せざる終えなくなった。そこで、この段階で公平に賞金を分けるにはどうしたらよいか。という問いをパスカルが受けた。
 コレをきっかけに、2人で確率の証明に関わることになる。

 微積分にはついてはあんまり書かれていない。
 アメリカンジョーク
「1972年の秋、ニクソン大統領はインフレーションの上昇率は減少しつつあると発表したが、これは現職の大統領が再選に向けて三次導関数を利用した(二次関数の増減を問題にした)はじめてのケースである。」(数学者ヒューゴ・ロッシ)

◎18世紀 ニュートンとオイラー
 この人達が、数学を趣味から実用的な学問として発展させた。
 オイラーにいたっては、「完全でない解」を求めることにさえ尽力した。(数学者であるとすれば、凄いことだと思う!)

◎ヴォルフスケール懸賞
 ヴォルフスケールさんは実によいアホ。
 ある日恋煩いで自殺することにした。その自殺をすると決めた時間の一寸前、たまたまフェルマーの最終定理(の証明の失敗例)を目にした。気づいたら時間が過ぎていた。
 そしていつの間にか死ぬ気も失せていた。
 そんな生きる希望を与えてくれたフェルマーの最終定理の証明に懸賞をかけた。ただし、フェルマーの最終定理が正しい時だけで、間違っていることを証明しても出ない。
 というのがロマンがあってよい。

◎ゲーテル不完全性定理
 このおっさんは1931年きっつい証明をしてしまう。
 ゲーテルさんが、証明不可能な問題がある(正確な所は理解しきれていない)ということを証明した。そのため、フェルマーの最終定理が。証明不可能である可能性が出てきてしまった。
 まったくもって、証明という行為自体が無駄かもしれないのだ。

◎谷山=志村予想
 この日本人が、谷山=志村予想(楕円方程式とモジュラー形式が実質的には同じ)というものを打ち立てた。(これは意味不明)
 この予想自体は、全く異なる分野を結合する役目をもつ大変大きな者らしい(例では磁石と電気のようなもの)。
 そして、この予想自体が数学界の中で大きな役割を果たす。
 また、この予想がフェルマーの最終定理を解く鍵となる。

◎アンドリュー・ワイルズ
 この人が最終的に証明する。
 上記谷山=志村予想が真であることが証明されれば、同時にフェルマーの最終定理も証明されると言うことを、ケン・リベットが証明。
 これによって、ワイルズは道筋を見つけることとなり、7年がかりでフェルマーの最終定理を証明する。
 ちなみに、最初の証明後、ミスが発覚し厳しい現実に叩きまくられるワイルズはあまりにも可哀想なのであります。

とまあざっくり。

 

 書評等を書く時に、訳者の名前をタイトルに入れるかというのは悩む。映画だと訳者や監督脚本家等々。知れば知るほど色々な人の合作なんだと言うことに気が付くわけで。
 この本の訳者は青木薫さんという方。

Pages:
  1. 数字といえば、個人的に数霊にはかなり興味あるなー。
    数字って面白いですよねん。

    それにしても君って読書家よねぇー。感心!
    私も見習ってもっと本読もうっと。

  2. やいだ(みむら)

    数字を崇拝する宗教ができるくらい
    数字には人を引き寄せる力がある。
    すごいっす。

    試験前全く本が読めてなかったので(><)

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