『ルネサンスとは何であったのか』塩野七生

 文化と呼ばれるものは、時代によって盛んな頃と盛んじゃない頃があるらしい。例えばキリスト教の押さえつけによる1000年の鬱憤を晴らす様に文化が花開いたのがルネサンスだとか。この著者のノリでは、きっかけから捉えれば、西暦1200年代から1500年代くらいまでに渡る400年くらいの期間である。すごすぎる。
 翻って、今の時代ってのは、あんまり文化が盛んではない時代な気がする。どちらかというと資本主義教団の強力な押さえつけによって、文化を楽しむ余裕がないと言うか。

 その長期に渡るルネサンス時代花開くきっかけとは何だったのか。そんなことが書いてある本を読んだ。
 もしかしたら、現代にも何らかの大きな変化が起きるかもしれない?

 「ルネサンス」というのは、14-15世紀にイタリアを中心に起きた大きな文化運動(wiki)をルネサンスというらしい。レオナルド・ダ・ヴィンチさんとか、ミケランジェロさんとかこの辺が有名どころ。

 このルネサンスの時代までは、強力なキリスト教の教会によって、「信じる者は幸いとなれ」という合い言葉で、あらゆるものを「信じる」ことで思考を停止させられていた。その逆に「疑う」と言う言葉があるわけで、様々なきっかけによって、この時代に「なぜ」と言う疑いが噴出し始めた。ということだ。

見たい、知りたい、わかりたいという欲望の爆発が、後生の人々によってルネサンスと名づけられることになる

 その基礎として、まずは以下2名。13世紀くらいに活躍した人達。
 聖フランチェスコさん(パチパチ)
●キリスト教の教えを、俗語と呼ばれるイタリア語で説いた。(当時一般の人が殆ど理解していないラテン語で祈っていた)
●自分に向いた仕事をしながらでも、キリスト教徒になることを認めた(そういう階級を作った)。(キリスト教徒は、一年中修道院に籠もっていた。)
 これによって、それまで盲目的に信仰していた宗教を、自分の使う言葉で語れるようになった。そして、職業の自由も生まれた。
 そして自然とフランチェスコ宗派には、金を持った商人なども集まる様になる。金と人が集まればまあ、あとは自然と力もわいてくるわけですな。

 そしてもう一人、フリードリッヒ二世さん(パチパチ)。聖フランチェスコが商人の子であるのに対して、この人は皇帝の子で偉い人。
 この人がやったことは
●法律の整備(再整備)
●皇帝の手足をして機能する官僚システムの構築
●税制の整備(経済を活性化させるために関税を抑えた)
●通貨の整備
●大学を新設(当時ローマ法王の支配下の元、キリスト教的な法学が多かったのでコレに対する大学を作った)
 この人は宗教と政治を切り離すことができた人として大きい。特に5番目。
 この大学を使うことで、当時粗悪な言語であったイタリア語を改良したりしている。{イタリア語には「古文」と言うのがないらしい。この時代にある程度の言語の体系が固まってしまったからとか。}この辺で詩人のダンテさんとかも役に立っている模様。

 これら2人の人物等の影響により、物事を理解し疑う力がイタリア人に付いていく。
 それが芸術とかの方面に花開いていったというのがルネッサンスだと言う。その基盤の中で、フィレンツェ→ローマ→ヴェネチアとこの波が波及していく。
 なんといっても、庶民(聖フランチェスコ)からとお上(フリードリッヒ2世)からが同時に動いているのが大きいよね。

 それに、町の気質なんかも絡めて、芸術家とかを紹介。例えば、フィレンツェでは「工房=何でも屋」的なところで、いろんな仕事が入ってくる。そんなマルチな人間が育つ国で、何でも屋ダヴィンチ(解剖から彫刻まで)が育つ。
 その後ローマ、ヴェネチア、大航海時代の話や、印刷技術の話なんかがいろいろ書いてあるけど、書いちゃうと迷走しそうなので、きっかけのみで感想おしまい。

 全体的に、この時代のキリスト教会の持っていた強さをかいま見た気がした。その暴発が芸術方面にいったというのは、理解ある指導者がいたからでもあるようだ。今の様な思想の自由がある程度許され、好きなことを調べ、考えることができる今の環境は、かなり恵まれているのよなぁ。
 日本人で言えば、今「疑う」という事が少しずつ、特に若者を中心に、広がっている気はする。少しずつ何かは代わり始めているよなぁ。

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