The West Wing 『Inauguration』

 The West Wingというドラマを見ると「国を動かしているのは紛れもなく人間なんだなあ」としみじみと思わされる。
 この日本という国では、政治家はほとんど尊敬されていないように見える。まして政府メンバーともなると、逆に尊敬がなくなるような気さえするのは気のせいか。
 彼らは人の人生に直結する決断を毎日下し続けているわけで。私たちの代わりに政治をやってくれている事に感謝し尊敬し、その上で批判をすべきだろうと思う。感謝や尊敬と批判は両立する。
———-以下本題 Fourth season 14-15話

 大統領が就任して4年を勤め上げた後、再選を果たし2期目の就任式を行う。
 この就任式と同時並行で、大きな課題が信仰しており「大量虐殺が行われているアフリカの赤道クンドゥー共和国に軍事介入して止めるかどうか」。クンドゥでは2万人以上が殺されており。アメリカ兵を入れれば150人程度が死ぬ可能性がある。(国名含めてフィクション)

 ここで、クンドゥ人の問題及び就任式で最も大きな役割を演じるのは、就任式の演説(Inauguration)の為に3週間の契約で雇われているスピーチライター「ウィル・ベイリー」。
 ウィルは国務省の要望で就任演説原稿中の

アメリカは警察ではない
自国の価値観を押しつけてはならない

という節について、「心にも無いこと」は言いたくないと言う大統領の要望で、変更を手がけることになる。
 ウィルは大統領の過去の演説を引っ張り出して研究し、大統領の理想に近い演説にしようと努力する。しかし、国務省が作った文章をほとんど変えることができず、ストレスいっぱいでホワイトハウス内のガラス割ったりする(やりすぎw)。

 ところで、大統領はウィルの部屋にふらっと訪れ問いかける

大統領:
Why is a Kunduness life worth less to me than an American life.
なぜ私はクンドゥ人より自国民を守るのか
ウィル:
I don’t know, sir, but it is.
分かりません大統領。しかしそんなもんでしょう。

この発言を受けて、大統領は悩み始める。下手に反論されるよりも同情されて感情が興る事って結構ありますよな。脚本がかなり上手い。 

合間合間で
女性の権利意識が高いCJが「男が妊婦を殴ってたら止めにはいるでしょ?」
反対派のトビーが「戦地に行くのは大統領じゃない誰かの子どもを送り込むんだ」
ユダヤ人のジョシュが「1930年代にアメリカが世界の警察なら僕らには・・・」
そんな論争を挟みながら。

 悩みに悩んだ大統領は最終的に、ローレル&ハーディ(お笑いコンビ)のおもちゃの兵隊が行進している場面を見て、派兵を決定する
 ローレル&ハーディというのは初めて聞いたけど、1920年代すなわちナチスが元気になる少し前の時代に、軍事主義をコケにしてお笑いを作ったコンビらしい。そのお笑いのおもちゃの兵隊を見て、最高司令官の顔に戻っていく。ナチスを許すわけには。という解釈は直接的すぎるかな。
 この最終決定があったのは就任式の半日前。この決定を受けて、当然外交政策は大きく変更されることとなり、就任式に向けてホワイトハウスが一丸となる。

 そして就任式当日。さあ就任演説!と思ったら、そこを飛ばして就任式後のパーティーへ。
 ホワイトハウススタッフの顔を見れば、演説がどうだったか一目で分かるという粋な演出であります。(もちろん大成功)
 ここで、別室にスタッフは集められウィルは正式にホワイトハウスに迎え入れられます。

Never doubt that a small group of thoughtful and committed citizens can change the world.
献身的で思慮深ければ少人数でも世界を変えられる

大統領がこういって激励します。ここできょどるウィルの演技はなかなかよいです。

 ところで、就任演説シーンがなかったので、演説をウィルがどう変えたのかも分からなかったわけなのですが。ウィルが見つけてきた、過去の大統領が発言する予定だったけど発言しなかった文章。これなんだろうなあと推測できるような作りになっています。

We’re for freedom of speech everywhere.
どこでも言論の自由を
We’re for freedom to worship everywhere.
どこでも信仰の自由を
We’re for freedom to learn everybody.
誰でも教育の自由を
And because you can build a bomb in your country and bring it to my country, what goes on in your country is my business.
今や誰でも爆弾を作ることができるし、それを私の国に持ちこむこともできる。よその国の事も他人事じゃない。
And so we are for freedom from tyranny everywhere.
だからこそ、私たちはどこであっても暴虐からの自由のために行動する
(訳はTOEIC400点代のミムラにつき超適当。添削歓迎)

 この回は911後最初の冬くらいの放送だと思われる。したがって、911の影響をかなり引きずっているのだろうとも思う。まあでも。お節介な人って必要だよね。民主主義っていいもんだよやっぱり。

 それにしても、このドラマの話の緻密さはほんと感激する。2回目に見るとそりゃあ感動しますなあ。こいつが週間ドラマだってんだから驚くわ。

(2300文字超。引用ばっかりなのでもっと少ない。)

Pages:
  1. あー、これはいいレビュー。
    「観てみたいな」って思わせてくれますね。

    >添削歓迎
    添削ってんじゃないんですけど、繰り返されるbe for ~は「~の味方だ」「~を支持する」なのかしら?
    ドラマの中(の字幕なり吹き替えなり)ではどう訳されていたのか気になります~

  2. やいだ(みむら)

    こいつに巧妙に恋愛話まで絡めているところは
    飽きさせませぬ。うむ。

    We’re for freedom of speech everywhere.
    言論の自由を広げたい
    We’re for freedom to worship everywhere.
    信仰の自由を広げたい
    We’re for freedom to learn everybody.
    教育を受ける自由を広げたい
    And because you can build a bomb in your country and bring it to my country, what goes on in your country is my business.
    今は自国の爆弾を他国へ持ち込めるし、よその国の出来事もひと事ではない
    And so we are for freedom from tyranny everywhere.
    だから、独裁国家を世界からなくしたい

    てな具合です。
    We are for ××
    ってのは、「俺らホワイトハウスは××のために仕事してんだよ!」くらいのノリかなと思って見ていました。

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