刈谷市美術館の『レオ・レオニ 絵本のしごと』という美術展に行ってまいりました。
レオさんは、1910年オランダ生まれのユダヤ人グラフィックデザイナー。30才手前でユダヤ人であるためにイタリアからアメリカに亡命し、49歳の時に『あおくんときいろちゃん』で絵本デビュー。最初は電車で退屈する孫に、切り絵で物語を作って聞かせたところからだとか。
どれも明確なメッセージ性のある作品ばかりで、周囲に溶け込みきれない気持ちや、自分には何か足りないんじゃないか、というような自意識つーか、自分をどう理解するか、といったところに訴えかけてくるような話が多い。最終的には、自己を肯定する術を教えてくれているようで、温かい気持ちになる。もしかしたら自分がずっと飢えていたものかも。
でもって、さすがグラフィックデザイナー。色彩がとても美しい。そして、個人的に一番キタのは、背景への執着。絵本なので、画面内の情報はシンプルでも、地面や背景の植物は必ず変え、かき分けているのが印象的だった。
抽象的ながら、よく地面や植物を表していて物質への愛を感じる(笑)
印象に残っているレオさんのコメントが「単純なものを作れば読んだ人がそれぞれの人生に合わせて理解するので、単純に越したことはない」みたいなもの(正確に覚えとけよ)。この⇒のペツェッティーノに至っては、必要最低限の塊だけで物語が進んでいく。
ねずみも数多く使われていて、個人的な印象だけど、子供が感情移入しやすい対象なんだとろう(小さくて、ちょろちょろしていて)。
レオさんの本の多くを翻訳している谷川俊太郎先生が、レオさんの「意味が伝わらなきゃ意味がない」みたいな言葉に対して、「詩では勘弁してほしい」とコメントを寄せているのには笑ったけど、レオさんは、読む人に明確なメッセージを伝えないと意味がないと考えているようで。ちょっとユダヤの方っぽいなと勝手な偏見。
そーそー彼は小さいころは、外で遊ぶというよりは、瓶の中に植物を入れ、箱庭的なものをつくっていたそうで。解説曰く統制可能な世界を好んだのだと。ちょっと説教臭くて、おせっかいな感じがとても気持ちのいいレオさんでした。
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最後の、とても気持ちのいいというところに深く共感。
私にとってもこのレオレオニ展はとても深い体験だった。もう自分のことはレオレオニ抜きでは語れない!(笑)
数学をしっかり勉強しないと抽象的なものを介した対話はできないのかと今まで思っていたけれど、万人向けの絵本でいとも簡単にやってのける彼には本当に脱帽。
こどもの頃は、ただ絵の部分での発想力豊かな表現方法に感動していたような気がしていたのだけど、はたして。
批判的で健康的で優しい。
これこそ理想かな。
『スイミー』のおかげで彼の名前には(作品にも)なじみがあります。
谷川氏の訳もすばらしいのだ。いいなこの美術展行きたい。
yuさん
あんだけシンプルなのに毒気が抜けているというのが、ほんますごいね。結構小さい子にも衝撃的な内容なのかもしれないねえ。もしかしたら、オトナが感じる以上に。
「優しさ」ってほんと力加減が難しいよね。私は、もうぜんぜんダメです。はい(苦笑い)
せろりさん
上掲のペツェッティーノは原文ではこの塊は”little piece,”なんだけど、谷川先生は「ぶぶんひん」と訳されているんですよね。「部分」も「部品」もなんかちがう。。。うーん。と、すっごい悩まれたのだと思うのです。
正直、谷川先生の事は良く知らないし、詩って未だに苦手ですが、いや、これだけで谷川先生を大好きになれそう。