インド映画『めぐり逢わせのお弁当』監督:リテーシュ・バトラ

『めぐり逢わせのお弁当』というタイトルからはとても想像のできない、深く濃い映画で、2回劇場で見てきました。
 主演のイルファーン・カーン氏の演技が本当に素晴らしかった。弁当食べるだけで感情を表せるなんてっ。

 話としては、妻に先立たれ仕事一筋で無愛想な退職間近のおっさんサージャン(イルファーン・カーン)と、ろくに口もきかない夫にそれでもどうにか振り向かせようと頑張る一女の母イラ(ニムラト・カウル)が、お弁当の誤配によって文通を始める。
 まずもって話の前提であるインドのお弁当配達システムダッバーワーラーがすごい。元は宗教上食べられないものがあったりするので、家で作った弁当を配達するために出来たシステムらしい。旦那が出て行った後に配達員に渡すので、旦那より早起きなんて必要も無く、奥様も便利そう。

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フィクション『族長の秋』ガブリエル・ガルシア=マルケス

 最近男のマザコンの作品ばかり見ている気がする。書いてないけど「冷たい熱帯魚」とかもマザコン映画だった。ノンフィクションなりの怖さがかなりあったけど。
 この本もマザコン本だと思って読むとそうとしか思えなくなるので、できるだけ別の角度から(笑)
 まずもって訳がいいなあと思う。鼓直(つづみただし)さんという方の訳で、最初こそ舟をこぎながら読んでいたけど、中盤からは一気に読み進められた。

 精密検査の結果によれば、動脈はガラスも同然、腎臓には海岸の砂がたまっているし、心臓は愛の欠乏のためにひびが入っていた。
P347

 あえて抜き出そうとしてみると、こういう流れのいい文章とか。これは、かなり終盤で、エンディングに真っ逆さまに転がっていく最中のセリフ。ここまで民衆からの愛に飢えた独裁者としての流れを汲んで、なんとも面白い一文。

 全体の文章構成も非常に変わっていて、目次には
族長の旅・・・・・・・・・・・・5
解説・・・・・・中島京子 369
だけ。
 途中に章立てとかなく、しかも段落が代わることもほぼ無く、主語も「われわれ」となっていて、語り手がしれっと変わって場面転回がわかりにくい。ちなみに段落が変わるのは P64 P119 P171 P224 P289 の5回だけ(ミムラ調べ)。段落としては6段落ですね。
 携帯小説の作家が読んだらびっくりするに違いない。そうでなくてもびっくりするのに。
 あとがきで知ったけども、ノーベル文学賞の受賞者だそうで。
 ひとつは無駄を省いたのだろうし、ひとつには、全体として一つの物語という意識があるのではなかろうか。彼なりに愛を手に入れられそうなところもあったり、悪政も善政もあったり、そんな中で彼の大統領としての人生が一つにまとまっちょるんだなと。

 物語としては、愛に飢えた独裁者のかなり長い大統領生活を綴ったもの。虐殺もレイプも好き放題やりまくる独裁者。文字が読めないほど学がない設定なので、政治色が強まりそうな大統領の物語にしては内容としても超平易。
 で、読んでいけば読んでいくほど、なんとなーくこの大統領に親近感が沸いてくる。そりゃあそうで、この大統領、大統領に留まっていられる原因は「勘が鋭い」だけで、あとやる事は愛されたくてやることばっかりなので。

 作者のガボさんは、コロンビアに生まれ、キューバにも住み、カストロさんとも仲良くしていたとか。
 彼にとって見える独裁者はこんなもんだったのかもしれない。
 自分なんかは、独裁者は、彼らは彼らなりの「正義」があるもんだと勝手に思い、「人間としては」擁護する気になったりもするけど。ちょっとイメージと違うなあというものを見させられて、若干のカルチャーショック。

 最後のほうで

結局、喜劇的な専制君主は、どちら側がこの生の裏であり、表であるのか、ついに知ることはなかったのだ。
P364

となる。
 ガボさんは独裁者を、独裁者としてというよりは、現実の「生」から目をそらした悲しい人間だと切り捨ててしまったんだなあと。身近で独裁を見た人の視野というものを味あわせてもらった気がする。
 ひっじょーに名作だとおもふ。また読もう。

 自分が思っているよりも、もっともっともっと世の中は単純かも知れんなー。

映画『ルビー・スパークス』/ゾーイ・カザン

 どうも。事務所の映画好きな後輩氏に「絶対先輩好きです!」と言われてみてみた映画。ふむ。
 ネタバレなんて気にしない(宣言)。

  処女作で大成功し、二作目が書けない小説家カルヴァンが主人公。人付き合いが極度に苦手で、精神科医のススメで理想の女の子を小説に書いていた。精神科医にかかっている直接的な原因は不明。
 とっさに夢に理想の女の子が現れ、わわわっと小説を書き、ある朝起きると小説に書いている女の子が実体化して現れている。さあ大変。そのヒロインの名前が「ルビー・スパークス」。ちなみに最初の夢に出てきたとき履いていたカラータイツがルビー色。
 実体化して現れたときには、下着に大きめのカッターシャツ(上着のみ)って、なんですかね。これ。最高です。

 序盤で、兄ハリーが、弟に小説に書いたまま(書き加えるとそのように変わる)の女性が現れた事実を理解した上で、

“For men everywhere tell me you’er not gonna let that go to waste.”
男として頼む、この奇跡を無駄にするな

と。なんつーか、男の最も醜いところを文章化された感じで心が痛む。
 兄的には小説を書き加えて巨乳にしたいばっかりのようだがw

 「自分の事しか考えない」「女性を理想化しすぎる」男性を厳しく皮肉る映画で、見ながら「ごめんなさい」と心で何度思ったか。
 予断だけども女性の書いた脚本かなーと思いながら見ていましたが。やはりそうで、いやそれ以上で、脚本は映画のヒロインでもあるゾーイカザンなのだと。主人公のポール・ダノは、映画を離れてもなんとゾーイカザンのパートナーだそうで。

 そんなこんなで「ごめんなさい」と思いながら見ているわけですが、さんざんやりたい放題やった挙句、心身の拘束から彼女の記憶をリセットした上で解放する。
 カルヴァンは打ちひしがれながらも、それを小説にし、復活し、なんやかんやで家族とのわだかまりも解消。ちょっと成長しました感をもった散歩途中に、また以前の記憶をなくしているルビーと再開し、やり直すところでお話終了。ルビーはカラータイツもはいておらず、読まないといっていた小説を読んでいたり。
 理想どおりの彼女じゃないけど、受け入れたという象徴なのかな。にしてはw

 至極面白いと思うけど。モテない男の最も駄目な思考と思う「自分なんかじゃ申し訳ない」ってのは書いて欲しかったかなw
 利己と利他がぐっちゃぐっちゃになるのが、人間の面白いところだと思うんだな。映画としては、男の「利己」が強すぎで、申し訳ない気持ちで一杯になってしまった。
 女性はどー見るんだろう。

映画『告白』監督:中島哲也 原作:湊かなえ

ネタバレなんて気にしない!

 憎しみってのはやっぱり、その人の人間らしさを映し出すという点で、非常に美しいですよ。松たか子と木村佳乃の美しき名演技を見られただけで大満足です。
 また、音楽の演出が憎いですね。

 挿入歌の Last Flowers – Radiohead これがたまらない。
 コンビニで店員さんのしゃべっている声は聞こえないのに、それに対応する木村佳乃の絶望の声だけが聞こえてくる。一切の雑音が排除された音の演出がめっちゃ心をゆさぶってきやした。

 中身的には、子供を殺された松たか子演じる森口先生が、その殺した生徒の牛乳にこっそりHIVに感染している血液を混ぜて飲ませる、ってなところから始まる。そのクラスの子たちには、人殺しであることと、牛乳に血液が混じっていることをも伝えられ、殺した子は当然苛められる。
 原作が推理小説ってなことで、それぞれがそれぞれの気持ちや事実を告白していくことで、事実がちょっとずつ明らかになっていく。そんなに目新しいことがあるわけではないけど。中学生の行き当たりばったりな思考が明らかになるのは、身に覚えがあるような。
 不安定な生徒が、より不安定になり、どんどん状況は悪化していく。

 この映画、母親から子供への愛だけが真実だという書き方がしてあるんだと私は思ったけれども(そーいう映画ではない。はずだがw)。多少いびつながらも。それを裏にしっかり「憎しみ」がこれでもかと描かれていて面白かった。

 エンディングも、結構好きだなー。あれ、最後おっかあは死んでないよね。メインの回路切っていたし、松たか子の最後の涙声は母としての声ですよ。本人は憎くても、他の母を傷つけるようなことができるような流れではなかったとおもふ。けど。どうかな。

大盈(たいえい)は沖(むな)しきが若く、その用は窮(きわ)まらず。

 伊藤若冲の名前の由来は、この老子45章のこの「大盈若沖、其用不窮。」というフレーズなのだそうで。
「大盈」・・・満ち足りている
「沖」・・・空っぽ(岸から離れている、とか、何も無い原っぱとか、そーいうのを指すらしい)
「不窮」・・・不足することが無い

 で、
「本当に満ち足りているものは空っぽのように見えるが、中身が尽きることが無い。」
みたいな訳になるようで。

 30終盤の若冲が、さあ画家デビューするがときに、京都相国寺の大典和尚が付けたのだと。(多分w)
 若冲は、遊びも勉強もせず、動植物を愛するじみーな、おさっさんだったようで。しかも30終盤でのデビュー。中々粋な名前やなあと。しみじみおもってみたのですが。

『The Portland Trip』The West Wing/The Second Season/Episodes7

 (同性愛者である)君を全否定する共和党になぜいるのか。と聞かれて
 自分は共和党の95%の政策に賛成する。

“My life doesn’t have to be about being a homosexual.”
「ゲイであることだけが僕の人生ではない」

 めちゃんこグッとくる。
 相手の特徴を、あたかもその人の全てだとみなしてしまう人間の悲しい性と、コンプレックスを自分の一部と消化している強さと。
 ガチの名言だと思う。

『PILOT』The West Wing/The First Season/Episodes1

 このドラマ一番最初の回。
 キューバ人が1200名いかだレベルの船に乗って、アメリカに向かっている。嵐によってかなりの数が死に、100名ちょっとがどうにかアメリカにたどり着き、亡命を希望している。
 それぞれが、メリットデメリットを語る中で、大統領がこう言う。

“They came through a storm.
The ones that didn’t die want a better life, and they want it here.
Talk about impressive.”

 このドラマは説得力のある言葉をシミジミと教えられる。いや、非常にシンプルで辛い人の目線に立って話をするということなのだろうと。いや、もちろん、これは諸刃の剣だけど、しかし、やっぱり人間、情(情けと書いて情と読む)が大事ですよ。うむ。

良くわからない憲法解釈変更の件

二つほど議論を見て
・安倍ちゃんの邦人が乗ってる船守ろうプレゼンは、憲法解釈を変えなくてもいける(個別的自衛権の問題?)。
・必要だからと言って憲法解釈は変えられるもんじゃない。
(必要か否かの議論を出す時点で、憲法自体を変えることを検討すべき)
・集団的自衛権を行使しないというのは日本だけ(自民)
・日本の憲法は超硬性なので、解釈は時代に合わせて変化すべき
・集団的自衛権は他国のために攻撃する。ということ(共産)
・あくまでも自衛権(維新)
・「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」っての基準にならない(公明)
・集団的自衛権を行使する自衛隊は・・・戦力になってしまう(社民)
・9条2項に戦力は持たないと書いてある。自衛隊は戦力ではない。同考えても集団的自衛権は行使できない(共産)
・芦田修正によって、9条2項の戦力というのは「侵略戦争のための戦力」は持たない。という意味になった(維新)⇒なお、政府はこの解釈は採っていない。

—–さてはて—–
 なんか頭のいい人からスーパーへ理屈でやられた時のような感覚を覚える。素人から文句を言っても反論できるだけの材料はあるのだろうけど、なんかおかしい。
 国家権力の暴走を止める憲法と言う存在を、自分のYESマンばかり集めて国民を蚊帳の外において議論し、マルチ商法のようにめったに無いメリットだけ強調するプレゼンで納得させようとするおっさんに託せない。
 と2番組くらい討論番組を見て思った(少ない)

 国のあり方まで自分の貧相な頭でまとめられないけど。こー言うときに、戦争経験したじいさんたちにしゃしゃり出てきてほしいなと思う。まさに憲法解釈を作ってきたじじいたち。議論見ていて初めてしったけれども芦田修正。なぜ当時の自民党のおっさんたちは、食いつかなかったのか。
 こーいう弱っちい国の形を守っている理由はなんざましょ。

 過去60年の重みを、たまたま民主のヘマと景気上昇のノリとった議席で安倍氏が好き勝手にしてしまうのは、あまりにも、あまりにも。

国連憲章第51条〔自衛権〕
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国が措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。
国際法研究室

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書 平成26年5月15日

『キツツキと雨』監督:沖田修一

 面白かったですよー。主人公の木こりと、若者の映画撮影を通じたドタバタコメディである。
 ってな事以上は一切事前情報入れずに見たほうが面白いと思います。
 見るつもりの方は是非ネタバレ前に、レンタルやへ。



 木こりの 岸さん(役所広司) の奥さんは亡くなっているようで三回忌。さらに、息子 浩一(高良健吾) がいて中々仕事も続かずふらふらしていている。親子喧嘩して浩一が出て行ったところに、この気弱監督が現れ、ゾンビ映画を年上のスタッフに遠慮しながら撮っている。

 最初は監督が気弱にやってるもんだから、スタッフもやる気が無い。いや実際はスタッフのクリエイター集団は、監督が気弱で自己主張しないからやる気が無いんじゃなくて、映画が面白くなさそうなのでやる気が無かった。岸さんたちの尽力で、面白くなってくると段々やる気が出てくる。クリエイター軍団は少なくとも、面白いかどうかだ、と割り切っている感じがこの映画のクールな感じを出していると思う。

『バーレスク(Burlesque)』

20140517Burlesque こーいう見るだけでストレス吹っ飛ぶような映画だいすきっすわ。ストーリーはありがちで、田舎娘がロスのクラブのTOPダンサーに上り詰めるサクセスストーリー。一方そのクラブは借金が払えずピンチ!どうやって店を救うんだ!
 アリ(クリスティーアギレラ師匠)はむっちゃ可愛いし、テス(マダムシェール)はむっちゃんこ魅力的やし。この2人の歌唱力をちょくちょく味わえるだけでかなり満足。

 この映画でオヤオヤすごいなと思ったのが、超序盤、アリが「この店はストリップですか?」と聞くと受付が「口に気をつけろ」ってな場面から始まる。プライドもって踊ってんだよって事だけど、この映画終始一貫して、みんな貞操観念がかなり強い。あくまでも性を売るわけじゃなくて、ダンスや歌を売るんやで!というプロ根性がこのクラブ、映画には終始流れていて、非常に見ていて気持ちがいい。

 あー検索してみる。マダムCherは、Believeの方なのね。いや、下記の映画内の中盤の曲のがいいぞ!私は負け犬ちゃうねん!私は立ち上がるねん!