アプローチとしての福祉社会システム論

アプローチとしての福祉社会システム論
著:訓覇法子(くるべのりこ)

 ここ数年のテーマなんですが、人を騙さないと食べていけないっておかしくないですか?貧乏人が生きるために金持ちのお金を奪う行為って、ただの富の再配分ですよね。
 今のシステムでは、富の再配分がちゃんと行われていない。だから沢山の人が詐欺的な行為を働かなきゃいけない。(本当はこの人必要ないと思いながら商品売りつけたり。過剰なマーケティングしてみたり。美しくない人を美しいですねと褒めたり)
 富の再配分がちゃんと行われていれば、会社にかかってくる無駄な営業電話も必要ないし。誰も使わない政府のシステムを残業しながら作る必要もない。
 なんかうまくいかねーもんかなーと思いながら、こういう本読んでます。

 以下読んでも面白くないと思うけど、自己メモとして。順番適当。推敲なし。批判文句大歓迎。著作権的問題はごめんなさい。

スウェーデンは教育水準高い人ほど多産

 ちょこっと面白かったのは、スウェーデンってのは家庭形成が遅いらしい。その理由は

女性がまず教育を受け、職業キャリアを築いてから子供を産むというライフ・スタイルのためである。
日本の傾向とは逆に、多子出産は女性の教育水準が高いほどその割合も高い。また、初子出産年齢は高齢化しているにもかかわらず、両親保険から給付される育児休暇手当の同額適用が30ヶ月以内であることなどから、第2子を出産する間隔が短いのが特徴である。(P249)

 スウェーデンでは教育水準が高いほど子供が多い。27年生きてきて5日くらいしか日本から出ていない私には想像すら付かない状態なんですが、これ凄い。

税方式と保険料方式

 日本では国民健康保険とか、介護保険とか、保険料としてとられる社会保障が多い(保険方式)。一方で、保険料など徴収せずに、普通に必要なお金は税金として徴収する方法もある(税方式)。
 この2者を比較した時に、保険方式にはこんなデメリットがある

スウェーデンが純粋な保険方式ではなく税方式を維持する理由として、最大の健康リスクと介護ニーズを有するグループは往々にして低所得層であり、保険制度から排除される危険性が高いことから、保険方式は福祉国家の国民連帯の理念とは融合しないと断言している。(P274)

 保険方式では、保険を払わないと当然サービスをうけられない。そうすると、一番貧乏な一番社会保障を必要とする人が、一番保険料を払えない可能性が高い。それって、意味あるの?と。
 日本が保険方式にしているのは、お金の対応関係が明確だとかいう説明もあるけど、一番の理由は「国民が納得しやすい」というところだよねと(本書では他にも一応いくつか説明してある)。増税には反対するけど、今でも年二回はある保険料の値上げは反対する人をあまり聞かない。これって、ただ制度設計する人の説明次第だろうと。
 それとも、日本は保険料も払えない貧乏人はのたれ死ねという社会なのかな。

社会民主主義

 現在の民主主義に対して、「社会民主主義」というものがある。この本の中では福祉国家にかなり近い意味で使用されており、スウェーデンなどもこの形である。

社会民主主義は、議会制民主主義を基礎として、国家の主導による計画経済、生産結果の公平な分配、社会的・文化的改良をめざす政治的国際運動である[Narionalencyklopedin,1995]。(略)
社会民主主義が共産主義と大きく異なるところは、議会制民主主義を容認することであり、議会を通して社会主義の実現は可能であり、必要であると主張したことであった。(P128)

 なんじゃらかんじゃら書いてあるけど、読んでいると福祉国家(社会民主主義)の重要なポイントは「脱商品化」と「脱家族化」でどうもあるようである。
 「脱商品」というのは「労働力=商品」である状況から脱出せよ!と言う意味。働かなきゃ死んでしまうという状況では、労働力は金を稼ぐ単なる商品になっていく。でもそれって、自分が労働できなくなったら詰む。社会保障をしっかりすることで、労働=金稼ぎから、少しずつ意味を持つようになってくる。これが福祉国家にとっては大事な概念。
 「脱家族化」というのは、社会福祉(子育て、医療、介護等)を、家族頼みじゃなくそう、特にココでは国が面倒を見ましょうと言う意味。日本では特に子育や介護を今まではずっと家族に頼ってきた。そしてそれは主に女性に。しかし、今や女性も普通に働く時代。誰が子育てをして親の介護をするのか。小さな政府というなら、もう一つの福祉の担い手「市場」に頼むことになる。金はいるけど。

ジェンダー問題

 上記の「脱家族化」に絡むところだけど、男女の平等についていかに政治が関わるかというのも大事な社会政策の一つ。
 コルピさんが次に3つに分類している。
●一般(伝統)家族支援型
 主婦が家庭内において介護や労働力再生産に最大の責任をもち、女性は第二次的な稼得者として機能する核家族を社会が理想とし、このタイプの核家族を援助するための公共政策をとる。
⇒児童手当、家族扶養控除、3歳以上就学前自動に対する公共保育サービス、が重視される
⇒イタリア・ドイツ・フランス等

●共働き家族支援型
 女性の継続的な就労を奨励し、男性および女性の両方が就労生活と家族生活を両立できるよう支援し、また家族内の無報酬介護労働を分担するように構築された公共政策を特徴とする。
⇒年少児(0-2歳)に対する公共保育サービス、母親・父親有給育児休暇制度、高齢者に対するホームヘルプサービス、が重視される
⇒スウェーデン、デンマーク等

●市場中心家族政策型
 市場力の支配的影響を容認し、個人が自らの能力と市場力との相互作用によってジェンダー関係を形成することを出発点とする政策。
⇒市場による解決が独占的であるため、私的解決がとられる。
⇒アメリカ、カナダ、イギリス、日本等

 日本はこのままでいいもんかね。

スウェーデンの社会政策

 スウェーデンの福祉国家の土台は、1932年に政権交代した社会民主党初代首相P.A.ハンソン(Per Albin Hansson)が掲げていた、「国民の家」構想が中心になっているそうで。
 国民の家の主要な政策は
●農業生産物の価格補助
●完全雇用政策
●社会改良政策
 の3点。

 間は随分とばして、1990年代分権化が大変大きかったそう

エーデル改革(1992年施行)は、長期的な医療ニーズをもつ障害者・高齢者のケア責任を広域(県)コミューンであるランスティング(第二次地方自治体)からコミューン(第一次地方自治体)に移行させ、分離していた高齢者サービスの行政責任を一本化した。改革によって、社会的入院の大幅な減少や特別住宅の拡充により、ノーマライゼーション達成がさらに一歩進められたといえる。(P230)

 その他障害福祉改革(1994年施行)、精神保健福祉改革(1995年施行)と地方自治体に金と責任を移管していった。
 また「高等学校までの学校九位区の全責任が、1991年コミューンに移行された」という。
 この結果、大きな地域格差はでていないけれど、教材費、生活保護支出額、高齢者サービスなどは、格差が指摘されているらしい。思ったより大したことがなかったんだろうな。

 ちなみに、こういった制度がきちんとまわっているのは

16-74歳のスウェーデン人の半数がこれらの非営利・ボランティア組織において何らかのボランティア活動(教育・指導、役員・組織事務、広報・世論形成、資金獲得、直接的援助など)を提供している(P220)

こういったスウェーデン人の気質も間違いなくあるんだろうと思う。日本人だって、本気で国が手を振ればやるんだろうけど。今の日本でボランティアってやってる人には申し訳ないけど、やっぱり馬鹿を見る感じだよねえ・・・。

社会政策のスタート

 社会政策は、産業革命によって始まったのよ。と。
 イギリスでは1700年後半。アメリカやヨーロッパでは1800年代。日本では1800年代後半。[YOKOYAMA’S HOME PAGE]

資本主義の発展にともない劣悪な労働条件や労働者の生活貧窮化をもたらした。これらの問題に対して、労働力保全や労使関係の共存的観点から、労働者ほど対策や社会保険が初歩的な社会政策として登場した。(P17)

 さらに、1930年の世界大恐慌打開の為に現れたケインズ経済理論。こやつが、福祉国家形成の礎を作り、スウェーデンが「社会民主主義」へと転換していく。具体的には雇用や所得保障を中心とした積極的な社会政策だとか。

 産業革命以前は、慈善活動や、業種毎の助け合い、ご近所の助け合い、お父さんを中心とした家庭で支える。こんなところで、まかなっていた(まかねていた)そうな。

 基本的に4つの伝統があげられる。
1.ユダヤ・キリスト教慈善事業
2.職業別グループによる共同自助
3.相互扶助・自助
4.家父長的保護・援助(P37)

社会政策とは

 そもそも社会政策って何よ?ってことだけど、それについては諸説を沢山並べてはいるけど、この本の立場については言及していない。
 一応一般的な定義として

国や自治体など公共団体の目的行為を公共政策と呼ぶ。このうち経済的側面に関わるものを「経済政策」といい、社会的側面に関わるものを「社会政策」という。何が経済的であり何が社会的であるかということについて、必ずしも一致した見解が存在するわけではないが、通常は(略)社会問題に対応し、国民生活の安定や向上をめざした政策を社会政策と呼ぶ。ただし、両者の区分は相対的であり(後略)(P26)

 社会政策はざくっと2種類に分けられる。
●選択的社会政策
 小さな政府というのにちかいのかな?

個人の経済的安全の確保は、まず家族と市場に求められる。これらの供給システムによって扶養が不可能な場合にのみ、国家は社会政策によって一時的な援助を提供する。(P53)

 こっちの場合、面白い批判があって、金持ちが貧乏人のために税を払う状況になるわけだから、貧困層と富裕層に二重構造ができる。そして税金を払うことについて富裕層の抵抗が強くなり国家維持に反対勢力を生みだす。(P69)アメリカさんの医療保険の話なんかみていると、モロ感じますねえ。
 定額給付金の時にもあったけど「資力調査をしてから」ということになれば、あからさまな二重構造ができることになるわけですな。

●制度的・普遍的社会政策
 こっちが大きな政府かな?

社会政策は市場経済や構造変化によって引き起こされる不平等を縮小する重要な手段として機能し、すべての人が社会的・経済的安全に対する権利を有するという基本的・社会的市民権を保障する。(P53)

/4000文字くらい/

Pages:
  1. 今更ですが、エレン・ケイの著作を読むと面白い繋がりが見付かるかも知れないなぁコレ、と思いました。
    まあ自分も齧ったことくらいしかないんですが。(すいません)

    勉強家なアナタに乾杯!

  2. やいだ(みむら)

    こんな所まで読んで頂けるとは、
    これはホント感激であります(><)

    エレン・ケイを調べてみると
    『恋愛と結婚』『児童の世紀』『母性の復興』
    と言う本があるようで。

    比較的影響の大きそうな
    『児童の世紀』せっかくなので読んでみます。
    感謝感謝

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