本『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』磯崎哲也


 この本の対象となる「ベンチャー企業」という言葉について以下の定義が与えられている

単に「自分で経営者として事業を行っている」だけでなく、「今までに比べてコストが何分の1にもなるサービス」とか、「今までになかったニーズの新製品」を売るなど、「イノベーション」を思考する企業

 この本は「(ハイリスク)ハイリターンを志向する会社」を想定している。例えば副業で「不動産を買って不動産賃貸業を始めよう!」みたいなのは対象ではない。

 さすが有名ブロガーが書く文章で、とても読みやすい。人生一回くらい「ガツンとやってみたい」と思う人は是非に。
 あと、実は税理士を中心とした不勉強な専門家に向けて書いているんではないかと思う。多くの税理士は株式で資金調達なぞ意識したことがないんじゃないだろうか。税理士の研修会が色々あるけれど、そんな研修会少なくとも名古屋ではまだ見たことがない。(銀行対策は山ほどある)
 起業する人は自己防衛として。税理士は専門家として。知っておくべきと思う。(もちろん税理士はこの程度で満足しちゃいかんね(><))

序章 なぜ今「ベンチャー」なのか
第1章 ベンチャーファイナンスの全体像
第2章 会社の始め方
第3章 事業計画の作り方
第4章 企業価値とは何か
第5章 ストックオプションを活用する
第6章 資本政策の作り方
第7章 投資契約と投資家との交渉
第8章 種類株式のすすめ

以下には自分なりの主要ポイントだと思った点まとめ

ベンチャー企業が株式で資金調達をする理由

イノベーションを起こすような「ベンチャー企業」の資金調達の基本は株式です。(P039)

 資金調達には基本的に「借入」「株式」の二種類しかない。
 「借入」は、貸主から見ればローリスクローリターン。年間数%の利息しか取らない一方で、不動産を担保に入れ、経営者を連帯保証人にして、基本的に全額回収できることが前提。
 「株式」は、投資家から見ればハイリスクハイリターン。利息も担保も連帯保証人も必要とせず、紙くずになるリスクを負う代わりに、投資額の数十倍数百倍の回収を目指す。

 ベンチャー企業が目指すのは、上場やバイアウト(Googleに数百億で株式を売却!みたいな)。
 ベンチャー企業で「銀行から借入」をする。しかし、うまくいかず月々の返済ができずに倒産すると、借入時の連帯保証により経営者が多大な負債を負わされ、担保に入れた親の土地まで失ってしまい再起不能となりかねない。というかそもそも貸して貰えない。
 「株式」なら倒産して失うのは、自分で出した投資額と信用くらいだろうか。

 逆に、普通の不動産投資するのでは、ローリターンすぎて「株式」では資金調達できないだろう。と

素性のよくわからない人を株主や取引先にしてはいけません

上場の際には、その企業の全般が隅々まで調べられることになります。…中略…今どきは、反社会的勢力・反市場的勢力が会社に関与していないかどうかのチェックも非常に厳格に行われます。(P058)

 ちょいと変な話ではありますが、「株式」で資金調達するならこの当たりのことは、意識しておかなければいけないのだなと。上場だけでなく、上場企業に株式を売る時なんかもチェックは必ずあるのだろうと。

資本政策の間違いは、初期の間違いほど、あとになってからの修正がきかない

ベンチャー企業の場合、うまく成功すれば、企業価値は急速に上がっていきます。このため…中略…あとになればなるほど少しの持分を修正したり動かしたりするのにも巨額の資金が必要になります。(P228)

 最初株式の議決権10%の価格が100万円で、いざ動かそうと思った時に株価が100倍になっていれば、同じ10%を動かすだけでも1億円かかる。しかし、上場前の経営者がそれだけのお金を集めるのは大変。かつ、集めたとしても上場に失敗したら…

 最初自分だけの資金で、コツコツ事業の種を作っているウチは気にしなくて良いし、どうにもならない。問題は最初に他人の金を入れる時に、しっかりと資本政策を考えないと取り返しが付かなくなってしまうということ。やること自体は簡単にExcelで考えられること。ちょっとの苦労でリターンはでかい。

 他にもストックオプションや種類株、事業計画等面白い点はあるけど、この辺で。

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