『国家の罠(外務省のラスプーチンと呼ばれて)』佐藤優

 かなり面白かった。
 面白いと思ったポイントは
●プロの情報戦を知れる
(最前線の外交官と検察官僚)
●ロシア外交を知れる
(特に北方領土問題)
人によっては
●冤罪ってのはどうやって生まれるのか
●獄内はどうなっているのか

とかも面白いポイントだと思う。

 この本は、ロシア外交の最前線で戦っていた佐藤優氏の2002年5月14日に行われた逮捕を中心として描かれている。その逮捕について自身で解説する形をとりながら、当時のロシアやイスラエルとの外交関係や、鈴木宗男という人物評、政治家と官僚の関係性、外務省の様子、検察の様子等をガンガン説明していく。
 情報屋が、冷静にこの国を眺めるとこんな風に見えるのか。と思う。

 読み終わった今はかなりこの人凄い。と思っているけど、どこか情報操作されているかもね。
 そういえば、ロシアでは仲良くなると男同士でも口と口で熱いキスを交わすらしい。もっと仲良くなると…ゴホンッ。情報屋凄い。

ぜひ読んでみてちょ。

以下特にちょっとだけ引用。

国策捜査について

 ちょっとだけ引用してみる。これは佐藤氏の取り調べにあたった西村検事の言葉(P384)

被告が実刑になるような事件はよい国策捜査じゃないんだよ。うまく執行猶予をつけなくてはならない。国策捜査は、逮捕がいちばん大きいニュースで、初公判はそこそこの大きさで扱われるが、判決は小さい扱いで、少し経てばみんな国策捜査で摘発された人々のことは忘れてしまうというのが、いい形なんだ。国策捜査で捕まる人たちはみんなたいへんな能力があるので、今後もそれを社会で生かしてもらわなければならない。うまい形で再出発できるように配慮するのが特捜検事の腕なんだよ。だからいたずらに実刑判決を追求するのはよくない国策捜査なんだ

おっしゃるとおりになるんだから偉いもんだ。

北方領土問題について

北方領土問題についての解説が大変わかりやすい。
北方領土については以下3点の重要な文章がある(P68)

「56年の日ソ共同宣言」本文へリンク
(鳩山一郎首相、ブルガーニン首相らが署名)
 ソ連は平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことを約束している。しかし、60年にソ連政府は、日本からの全外国軍隊(具体的には米軍)撤退という追加条件をつけ、この約束を一方的に反故にしてしまった。共同宣言という名前でではあるが、これは両国国会で批准された国際条約で、法的拘束力を持つ。

「93年の東京宣言」本文へリンク
(細川護熙首相、エリツィン大統領が署名)
 北方四島の名前を列挙し、四島の帰属の問題を解決して、平和条約を締結すると約束している。

「2001年のイルクーツク声明」(本文へリンク)
(森喜朗首相、プーチン大統領が署名)
 56年の日ソ共同宣言を「平和条約締結に関する交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文章であることを確認」し、同時に東京宣言の内容も確認している。

 引用終わり。
 日ソ共同宣言の9条には
「歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。」
 という文言が含まれている。(なお、平和条約は今もなお締結されていない。)
そこで、日露の領土問題については、歯舞群島及び色丹島については既に解決されていて、あと「国後島」と「択捉島」の帰属を日本領であることが確認できるかどうか、が問題となるという。

ナショナリズムについて

 小泉首相が誕生し田中外務大臣が現れたことで、「日本人の排他主義的ナショナリズムが急速に強まった。」と指摘している。これは本当に思う。世論高めるために、日本もそのうち「中国韓国バッシング」でも始めるんじゃないのか。
 著者曰く、ナショナリズムには以下の特徴があるという。(P152)

●「より過激な主張が正しい」という特徴
●「自国・自国民が他国・他民族から受けた痛みはいつまでも覚えているが、他国・他国民に対して与えた痛みは忘れてしまう」という非対称的な認識構造
ナショナリズムが行きすぎると国益を毀損することになる。私には、現在の日本が危険なナショナリズム・スパイラルに入りつつあるように見える

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