タレント議員擁立について、ラジオなんかでも「選挙民はそんなタレント候補に投票するほどアホでないことを示しましょう!」などと聞く。
つまり、「しっかり候補者の政策や経歴や考えをチェックして投票しよう」ということだと思う。
でも、今までそれができていないのはなぜか。多くの人もメディアも重大な問題を見落としている。
参議院比例区
話の本題に入る前に、ほんのさらっと参議院比例区の説明をしたい。だってタレント議員は参議院比例区で出馬する議員ばかりなのだから。
次回の参議院比例区選挙は、全国で48名の議員を選出。(96名のうち半数)
参議院比例区では有権者は「政党名」か、名簿から「個人名」を書く。これは全国みな同じルールで投票する。
⇒投票された票数に応じて、党に議席が配分される。
⇒党毎に票数の多い人から当選していく
という感じ。
候補者は158人チェックできねぇよ
で、その参議院比例区、しっかり個々の政策を見てやろう。そう思った時、何人分チェックしなきゃいけないか知っているだろうか。
前回の、第21回参議院議員通常選挙で参議院比例区に出馬した議員数なんと158人。
ちゃんと見る。と言った人は、158人分の政策に目を通して、比較し投票しなければいけないのである。ジャーナリストでもないのにそんなことできる?
私なんかは全部見ようと思ったらせいぜい職業欄を見るのが精一杯だ。ちなみに、会社で100人分の給与計算したりするけど、本気で嫌になる。仕事だからどうにかやるけど・・・。
こういう、実際とてもじゃないが把握しきれない制度だからこそ、「どうせちゃんと見ないだろ」と見透かされて、なんの理念も政策もなさそうなタレント議員を擁立するのだ。(後述するけど、タレント議員自体を非難したいわけじゃない)
こちらも、調べられないとなったら、怪しい弁護士、実業家、医者なんかよりも、テレビで誠実さを知っているタレント議員のほうが信頼できることは多々あるだろう。
逆に衆議院の小選挙区であれば、有権者も多少は政策くらい見て投票するモンだ。家にもビラが来て見る人も多いだろう。現に、同じ参議院でも選挙区ではタレント議員(二期目とか実績摘んだ後ならいる)って殆どいないのだ。以下、ちょっと調べてみたから見て欲しい。
過去のタレント候補一覧
参議院議員比例代表
舛添要一(タレント・評論家)
大橋巨泉(タレント、放送作家)
神取忍(プロレスラー)
荻原健司(スキーノルディック複合選手)
喜納昌吉(音楽家)
丸山和也(弁護士、タレント)
横峯良郎(さくらパパw)
大仁田厚(プロレスラー)
橋本聖子(スピードスケート、自転車競技の選手)
江本孟紀(プロ野球選手)
田嶋陽子(タレント)
アントニオ猪木(プロレスラー)
小池百合子(キャスター)
参議院議員選挙区
中村敦夫(俳優、作家、脚本家)
森田健作(俳優、歌手、タレント)
見事に、みんな参議院比例区だ。
投票者、政治家のせいではなく、選挙制度が悪い
何が言いたいかというと、この「タレント議員擁立の問題は、直に選挙制度の問題だ」ということ。
今、粋がって「ちゃんと候補者を自分の目で選ぶんだ!」と言う人がいるかもしれないけど、きっと挫折するだろう。一部の人はタレント候補へ入れ、それ以外の人は政党名を書く。特定の支持団体は自分の候補をちゃんと通せる。
まさに政治家の思惑通りに動いてしまう。もっと言えば、何の理念も政策もなくても知名度さえあれば、良いイメージさえあれば票を集めることができてしまう。
ちゃんと政策や理念や考えのある政治家を選ぶのであれば、衆議院の小選挙区のように、もっと一人一人の顔の見える制度に変えていくべきだ。もちろんいろんなメリットデメリットが別にあるが、ここでは別の話。
日本の選挙「加藤秀治郎」には、この調べる大変さの事を「情報コスト」と書いてある。
この、ネットのように情報が集めやすい時代だからこそもっと「情報コスト」が小さく済むような制度にすることで、もっと実力本位の選挙システムになるんじゃないかな。
勉強した人が政治家になればいい。はおかしい
ちなみに、上記とは別の話だけど
今度の選挙では芸能人候補者・スポーツ関係候補者が冷や水を浴びせられる結果になることを望む。
こんなコメントを見かけた。
個人的には非常に危険な言動だなぁと思う。職業差別そのものだ。
私は、政治家はあくまで「代表」であって、勉強量などは要素の一つでしかないと思う。エリートだけが政治を仕切ればいいと思う人は高偏差値大学の政治学部を出た人間だけで政治をやればいいと思っているのかもしれない。
しかし、政治ってのは声の弱い人も票さえ集めれば力を持てる。これが民主主義。多数決の醍醐味では無かろうか。
職業を見て「政治家になるべきでない」、学力をみて「政治家になるべきでない」みたいな言論は何の思考もせずに出てくるあんぽんたんな言葉であるとしか思えないのだ。
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