『日本の選挙』加藤秀治郎

「何を変えれば政治が変わるのか」というのが副題。

 地味ではあるけど、選挙制度に焦点を当てた本。
 選挙制度というのは、非常に大事。今の日本も、選挙制度がいびつなためにまともな意思決定さえできない。
 また、名古屋市が「市長」と「市議」がねじれているのも、実は「選挙制度」の問題。
(思い切って言い切ってみたけど。まあご愛敬)

 民主党の優柔不断を批判する前に。市議を批判する前に。何よりも選挙について熱く語る前に、一回は読むことを激しくお勧め。

目次
第一章 日本的「選挙制度論」の虚妄
第二章 民主主義思想と選挙制度の類型
第三章 選挙制度の細目とその作用
第四章 政治制度と選挙制度
第五章 選挙制度の作用
第六章 選挙制度改革の視点
終章 理念なき選挙制度を排除せよ

 目次はずいぶん難しめだけど、内容はかなり平易。

 以下メモ書き
 第一章ではまず、世界の標準と、日本のおかしな選挙制度について語られている。
 まず

 諸外国での選挙制度は基本的に小選挙区制(多数代表制)か比例代表制のいずれかをとっている。

比例代表制・・・「世論を鏡の様に反映する議会」を目指す
小選挙区制・・・「民主政治は多数決の政治」と、割りきった考え方をし、選挙区の多数派の代表を議会に送ればよい
 というような性質を持っている。

 しかし、日本の制度はというと、
衆議院・・・小選挙区制と比例代表制の混合型
参議院・・・一部小選挙区制、一部中選挙区制、比例代表制の混在
地方議会選挙・・・中選挙区制
 筆者曰く「かなり奇妙な構成」ということ

 第二章では、詳しい選挙制度についての説明。基本的に比例代表制と小選挙区制を比較しながらの議論となる。
 比例代表制の性質論拠

●「数に比例した代表」ということこそが、「民主主義の第一の原則」であるべき
●広い選挙区からよい候補者、「高度の知性と人格をもつ指導者」を選べる

 これに対して小選挙区制の性質論拠

●議院内閣制では、安定した多数派(いわゆる「機能する多数派」)が形成され、政局の堅実な運営を可能にすることが重要
●比例代表制では、特定利益の代表者が議席を獲得し、議会は「穏和で公正な人物からなる慎重な会議体ではなく、雑然とした、ありとあらゆる熱狂が渦巻く場となるに違いない」
●「流血を見ることなく、投票を通じて政権を交代させる可能性」がある
●政党が多くなり、どの党も過半数に達しないようなことになると、あとは政党の連立工作に委ねられてしまう

 第三章では、かなり細かく選挙制度の説明。面白いけどブログに書くときりがないので省略。
 第四章では、政治と選挙をどのように関連させ、選挙制度を考えていくか書いてある。
 例えば、大統領制と議院内閣制で取るべき選挙制度は全く異なる。
 議院内閣制では、「もし議会が多くの党派に分裂して、政府支持の安定的多数派が議会に存在しなくなったら、一切の政治活動が麻痺する」。
 大統領制では、大統領が議会とは別に選ばれるので、議会選挙では「機能する多数派」の形成がさしあたり大きな問題にならない。つまり、政党のご機嫌を伺わなくても混乱は生じない。
 他にも、議院内閣制では、党議拘束が必ず必要であること等も述べられている。

 第五章では、選挙制度が及ぼす作用について書いてある。
 小選挙区制をとったからといって、二大政党制になるわけではなく、他にもいろいろな影響がある。例えば日本の場合、人物本位の選挙(政党が変わっても、同じ人が当選したりする)なので、党に力が集まりにくく、二大政党制にはなりにくい。

 第六章では、いよいよどのように改革していくべきかについて述べられている。
 この章で衆参のねじれを懸念している。そして実際に今、問題になっている。結局参議院が強すぎるために、政治が上手く機能しない。こういった点などについても触れられている。
 参議院はどう位置づけるのか。そういった所から選挙制度は語らねばならない。

 終章では、この筆者の意見が述べられており、筆者的には「小選挙区制一本がよい」と、”今は”考えているそうである。
 あと、一貫しているのは「比例代表制一本」か「小選挙区制一本」どちらかしかないだろう。とのこと。
 とりあえず、今の日本の制度はありえない。そーいうこと。

 選挙制度って実は超重要なのだ。

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