Daily Archives: 2012 年 4 月 1 日

ノンフィクション『遺体』石井光太

 311後、遺体安置所とて使われた旧二中の3週間を綴った本。
 結構色んなところで紹介されているので、読まれた方多いのだろうなと。

 登場人物は遺体安置所の管理者に名乗り出た元葬儀屋、遺体搬送を任された地方公務員、検死を行う医者や歯医者、海上の遺体を引き上げる海上保安官等。それぞれの主観から、どう見ていたのかが書き出されている。
 焼け焦げた遺体の検歯をする歯科医。知り合いの遺体を搬送する公務員。自衛隊の捜索。NHKのドキュメントでは映し出せないような描写が、しっかり書かれています。

 読みながら一つ大きく考えておったのが、坊さんという職業。
 この本では坊さんというよりは元葬儀屋のおじさんの存在感が凄くでかいのだけど、死に直面した人たちに声をかけ、涙を流させたり、罪の意識から少しでも気持ちを軽くしてあげたり。
 死を恐れるとき、死に直面したとき、死を振り返るとき、声をかけてあげられる仕事というのは、やっぱり坊さんではないですか。
 お医者さんも出てくるが、生を前提とした仕事なのだなと。同じように死の現場に立ち会う職業だと思うけれど、坊さんとは立場が真逆なわけで。

 震災の関連の報道をみると、現地の方が「まだ、復興という気分にはならない」と言われるのを聞く。あるいは、元の生活を取り戻したいという。

 なんか漠然と思ったけど。避難用リュックに、お線香くらい入れておいてもいいのがしれない。

 すごくいい本なのだけど、これくらいしか書けなかった。