Daily Archives: 2009 年 5 月 10 日

権利確定主義と会計上の収益

税法と会計の話

主に
収益計上基準としての権利確定主義 : 判例を中心として 福島 千幸
●TACの教科書
を元にして

●●●●会計上の収益
 会計で収益を認識しようとすると
「実現主義の原則」(企業会計原則){古くさい概念}
「資産増加負債減少に見合う額のうち、投資のリスクから解放された部分」(概念フレームワーク){青臭い概念}
 という考え方がある。

 具体的には、実現主義の原則によれば
「財貨・役務の引渡し・役務の対価としての貨幣性資産の受領」(狭義)+(一部発生主義)+(一部現金基準)
「収益の確実性OK・金額の客観性OK」(広義)
 概念フレームワークによれば
「事業のリスクの拘束されない独自の資産を獲得したとみなすことができる事実」(事業投資)
「事業の目的に拘束されず、保有資産の値上りを期待した金融投資に生じる価値の変動事実」(金融投資)

●●●●権利確定主義
 一方税法では「権利確定主義」によっている。はずなんだが・・・。
 とりあえず、法人税は全くそんなことを表現した条文や通達はない。だもんで基本は法人税は会計と考えを同じくしていいのではないか。そこに税法ならではの事情を盛り込んでいる。

 法人税では、以下のように22条4項にて、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるということで、会計に準ずる事を言っている。(ただし、特別利益に計上されるような事については、触れていないように見える)

法人税法第二十二条  内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2  内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3  (損金の規定につき省略)
4  第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。
5  第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引及び法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項 (中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)をいう。

 で所得税においては、国税にこんなページがある

No.2200 収入金額とその計算
その年において収入すべき金額とは、年末までに現実に金銭等を受領していなくとも、「収入すべき権利の確定した金額」のことです。したがって、実際に金銭等を受領したか否か、また、代金を請求したか否かは関係がありません。

 これはどうもかつての通達に書かれていた内容らしい。このあたり方権利確定主義という言葉がでてきたとか。

 所得税はやりたいほうだい。

所得税法第三十六条  その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
2  前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。
3 (無記名公社債省略)
(所得税基本通達[収入金額]のへんも面白い)

●●●●権利確定主義とはなんぞや
 法人税では問題は少ない・・・ん?上記の論文を読んでいると、そうでもない・・・。

不動産が商品として売買された場合については、これに伴い所有権移転登記または引き渡しのいずれかがされた時に販売が実現したものとして
東京地裁昭和46年5月12日

 法人税の現行の通達では

2-1-2 2-1-1の場合において、棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては、例えば出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日、検針等により販売数量を確認した日等当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。この場合において、当該棚卸資産が土地又は土地の上に存する権利であり、その引渡しの日がいつであるかが明らかでないときは、次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることができる。(昭55年直法2-8「六」により追加)
(1) 代金の相当部分(おおむね50%以上)を収受するに至った日
(2) 所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日

 となっているので、権利確定主義というのは(2)なんでしょう。どっちでもええよ。ってな事か。(こーいう適当なところが、法律のいいところであり悪い所なんだろうねぇ)

 留意しなきゃいけないのは、税務署は引き渡しとか以前に「契約」がかわされて、権利が確定した時点でいちゃもんを付けてくる可能性がある。ってなことでしょうかね。

 中途半端ですが、つづきを書くかも解らないので、公開して力尽きます。