Category Archives: 画を見る

『バーレスク(Burlesque)』

20140517Burlesque こーいう見るだけでストレス吹っ飛ぶような映画だいすきっすわ。ストーリーはありがちで、田舎娘がロスのクラブのTOPダンサーに上り詰めるサクセスストーリー。一方そのクラブは借金が払えずピンチ!どうやって店を救うんだ!
 アリ(クリスティーアギレラ師匠)はむっちゃ可愛いし、テス(マダムシェール)はむっちゃんこ魅力的やし。この2人の歌唱力をちょくちょく味わえるだけでかなり満足。

 この映画でオヤオヤすごいなと思ったのが、超序盤、アリが「この店はストリップですか?」と聞くと受付が「口に気をつけろ」ってな場面から始まる。プライドもって踊ってんだよって事だけど、この映画終始一貫して、みんな貞操観念がかなり強い。あくまでも性を売るわけじゃなくて、ダンスや歌を売るんやで!というプロ根性がこのクラブ、映画には終始流れていて、非常に見ていて気持ちがいい。

 あー検索してみる。マダムCherは、Believeの方なのね。いや、下記の映画内の中盤の曲のがいいぞ!私は負け犬ちゃうねん!私は立ち上がるねん!

『レオ・レオニ 絵本のしごと』刈谷市美術館

 刈谷市美術館の『レオ・レオニ 絵本のしごと』という美術展に行ってまいりました。
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 レオさんは、1910年オランダ生まれのユダヤ人グラフィックデザイナー。30才手前でユダヤ人であるためにイタリアからアメリカに亡命し、49歳の時に『あおくんときいろちゃん』で絵本デビュー。最初は電車で退屈する孫に、切り絵で物語を作って聞かせたところからだとか。

20140504leolopnni_peche どれも明確なメッセージ性のある作品ばかりで、周囲に溶け込みきれない気持ちや、自分には何か足りないんじゃないか、というような自意識つーか、自分をどう理解するか、といったところに訴えかけてくるような話が多い。最終的には、自己を肯定する術を教えてくれているようで、温かい気持ちになる。もしかしたら自分がずっと飢えていたものかも。
 でもって、さすがグラフィックデザイナー。色彩がとても美しい。そして、個人的に一番キタのは、背景への執着。絵本なので、画面内の情報はシンプルでも、地面や背景の植物は必ず変え、かき分けているのが印象的だった。
 抽象的ながら、よく地面や植物を表していて物質への愛を感じる(笑)

 印象に残っているレオさんのコメントが「単純なものを作れば読んだ人がそれぞれの人生に合わせて理解するので、単純に越したことはない」みたいなもの(正確に覚えとけよ)。この⇒のペツェッティーノに至っては、必要最低限の塊だけで物語が進んでいく。
 ねずみも数多く使われていて、個人的な印象だけど、子供が感情移入しやすい対象なんだとろう(小さくて、ちょろちょろしていて)。
 レオさんの本の多くを翻訳している谷川俊太郎先生が、レオさんの「意味が伝わらなきゃ意味がない」みたいな言葉に対して、「詩では勘弁してほしい」とコメントを寄せているのには笑ったけど、レオさんは、読む人に明確なメッセージを伝えないと意味がないと考えているようで。ちょっとユダヤの方っぽいなと勝手な偏見。

 そーそー彼は小さいころは、外で遊ぶというよりは、瓶の中に植物を入れ、箱庭的なものをつくっていたそうで。解説曰く統制可能な世界を好んだのだと。ちょっと説教臭くて、おせっかいな感じがとても気持ちのいいレオさんでした。

「顔」に魅せられた男~特殊メイクアーティスト・辻一弘の挑戦~

「顔」に魅せられた男~特殊メイクアーティスト・辻一弘の挑戦~

0412_04b 特殊メイクアーティストの辻一弘さんのドキュメンタリー録画してみてみた。
 辻さんは京都の錦市場で育ち、小さなコミュニティーで本音と建前を使い分けるオトナたちを目の当たりにし、表情の変化に興味を持ったのだとか。両親が中学生で離婚し、その後にも両親の喧嘩をまのあたりにしていたとか。
 京都の市場育ちといえば、愛する伊藤若冲氏。彼も市場の人間として育ちも、商売にはあまりのめりこめず、店を譲って絵の道に。彼の描く植物は必ず虫食ってるし、鳥も若干あほらしい顔している。
 人の顔色を見て育った気持ちが何となくわかる。とかいうと怒られるな(笑)ただ、観察力がすごいだけじゃなく、観察に意味があるんやなと。
 ところで、こーいうメイクとかに使う血管が、植物の毛とかを使うのだけど、生き物の神秘を感じるなー。血管も毛も植物も進化の中で出来てきて、できは恐ろしいほど似ているような面があったり。
 そうそう、作品中ではアンディー・ウォーホルというアーティストを描く。彼のコンプレックスを最大限に強調していく感じがたまらんわー。
 映画作りはイヤになったらしい(笑)

『行人』夏目漱石

 新海誠『言の葉の庭』にえらく感動しまして、作中で表紙がひょろっと出てくる漱石さんの「行人」も読んでみています。
 まだ読んでいる途中ですが。その中でちょろっと面白い表現があったのでメモ。

 物語の本筋は全く違うところを流れいきそうですが、その挿入の話として。
 ある娘さんが三沢という家の仲人で嫁いだのだが、精神病になって元の三沢家に引き取られることになる。引き取られた後、その娘さんは毎日三沢が出て行くときには「早く帰って来て頂戴ね」と、もしそこで黙っていると何度でも「早く帰って来て頂戴ね」と繰り返すのだと。
 その解釈をめぐって、概ね登場人物は可哀想な娘さんだねと言う感じなのですが、ちょっとページを隔てて、主人公の兄、一郎がこんなことを言い出す、

「ところでさ、もしその女が果たしてそういう種類の精神病患者だとすると、凡て世間並みの責任はその女の頭の中から消えてなくなってしまうに違いなかろう。消えてなくなれば、胸に浮かんだ事なら何でも構わず露骨に云えるだろう。そうすると、その女の三沢に云った言葉は、普通我々が口にする好い加減な挨拶よりも遙に誠の籠った純粋のものじゃなかろうか」(P105)

 ほほほう、精神病という題材使ってこんな捉え方をしてしまうのかと。まーそれだけ人間の本来の気持ちは「世間並みの責任」によって押しつぶされているんだと、上手いこと表現しよるなと、なるほど感心してしまったわけです。
 というか1913年くらいにこんなことを書いていたのかとも。約10年後にドグラマグラがでちゃうくらい、精神病に対する理解はまだかなり苛烈な時代だったんじゃないかとは思うけれども。この時代にしては精神病を肯定的に捉えているのですごいのかも?もちろん今こんなこと言うとむしろ問題発言でしょうが。ちなみに「カッコーの巣の上で」の原作小説は1962年なんですな。

『SHUTDOWN』The West Wing/The Fifth Season/Episodes8

 を、アメリカがSHUTDOWNしたんだねい。

【ワシントン】 米ホワイトハウスは30日深夜、連邦政府機関に対し、一部業務を閉鎖する計画を実行に移すよう指示した。米国の政府機関が閉鎖されるのは1996年以来、17年ぶり。
 米議会では30日夜、予算案を巡り土壇場の協議が続けられていたが、民主党が多数を占める上院は、オバマケア(医療改革法案)の修正を盛り込んだ下院の提案を否決。公共サービスを継続するために必要な予算案が成立せず、一部政府機関の閉鎖に追い込まれる事態となった。
The Wall Street Journal.

 せっかくの機会なので、米ドラマ「The West Wing」でSHUTDOWNしたと時のやつを見ていました。
 序盤は、ホワイトハウスが予算の決定で、多数派の共和党に追い詰められ劣性に追い込まれるも、最終的には謹慎中だった腹心の部下のアイディアで、国民的な支持を取り付け危機を脱する。

 事前交渉の場面でどんどん共和党に予算を削られる。その中には、念願だった授業料の税額控除等、公約でもあった主要な政策もあり、自身の政権の存在意義とかについて、皆が考えていくところが感慨深い。
 今オバマちゃんも、一丁目一番地のオバマケアが削られそうになっているところで、自分がなぜ大統領になったのかとか、考えておられるんだろうなと。(それに比べて日本の首相は巨大な権力を持ちつつゲフンゲフン)

 ドラマ中は、最終的には上手な国民へのパフォーマンスで、形勢逆転し、正論で共和党をねじ伏せ、予算成立を勝ち取るのだけど。さて、今回のアメリカのSHUTDOWNはどうなるんでしょうな。この日本名「ザ・ホワイトハウス」は、政略的な議論から始まるのだけど、最終的には各々が正論にひれ伏すという、綺麗な絵を見せてくれるのですきなのだけど。実際の政治もそうあればいいね。
 個人的には、オバマさんは、同姓婚に言明したり、シリアの一件も攻撃をせず収めたし、オバマケアもがんばってやろうとしているように見えるし。いや、実際どうなのかは知りませんが、たまーに耳を通るニュースは好意的なものが多く、頑張ってほしいなと思っているところでやんす。

追記メモ:東京新聞 20131002夕刊 大統領の粘り勝ちかね。
 一方、共和党が主導する下院は一日、退役軍人や国立公園関連などに限り支出を認める個別予算案の審議を始めた。上院民主党は予算案全体の無条件可決を求めており、上院は通過しない見通しだ。また、共和党内には大統領の主張に公然と賛同する意見が徐々に増えている。

想像力とセンスの前にひれ伏すもの達/映画『風立ちぬ』

 風立ちぬ。ちょいと見てきました。
 ちょうど同じ日に、小林賢太郎の「LENS」というお笑いの舞台作品をみておったのですが、似たようなことを言うんですね。

LENS
「想像力に知識はひれ伏す」
風立ちぬ
「センスは時代をさきがける 技術はそのあとについて来るのだ」

 この言葉が耳に残るというのは、自分の心に何かひっかかるものがあるっつーことだと思いますが。
 30も近くなって、知識の収集バカリに努めていてはいかんなと。宮崎駿は確実に「てめーらもガンバレ」と風立ちぬで言っていると思うわけで。なんか身が引き締まった思いが強く強くした一日でござんした。ロマンを持たねば。

 ほんとに風立ちぬは、ほんと最後に好き放題作りましたっていう感じですね。
 仕事と妻という男の二つの課題をドドーンと正面から扱って、なんか説教されている気すら。いや、説教されたよね。特に、ジブリ映画にしては随分ラブシーンがしっかり書かれていたように思う。雨戸を閉めるシーンに、ワクワクしちゃったよ。
 仕事が産み出す自己矛盾。「男は仕事をしてこそ」。しかしその仕事の成果である飛行機は、一つも帰ってこない。むなしい。

 なんか、モチベーションの源泉として家にDVDでも持っておきたいな。

アダムとイヴ、エデンの園⇒『アダムとイヴ』岡田温司

 挿絵が楽しそうなので、衝動買いしてしまった一冊。世界で最も有名なカップル「アダムとイヴ」。この2人がどう歴史的に、また、画や彫刻を持って美術的に解釈されてきたのか。
 結構面白くて、

  • アダムは両性具有じゃないと話が成り立たない?
  • リンゴを食べたことは人間にとって良かったのか悪かったのか?
  • 「エデンの園」はどこにある?
  • アダムとキリストの関係は?
  • 一角獣の起源は誤訳・・・

 いろいろ興味深い話題を提供してくれます。
 でもって、こういったそれぞれの自分勝手な解釈を見ながら、「あいまいな表現を自分の「理屈」に当てはまるように解釈する歴史」こそが宗教そのものなんやなと。そのある意味での滑稽さを楽しむには最適やなと。まーもうちょっと賢そうに言うなら、その時代の要請を移す鏡なんでしょうなと。

 と以下だらだらと書くつもりだけれども、その前にエヴァンゲリオンの話に。
 エヴァンゲリオンが旧約聖書的な用語を持ってくるのは、「人間特有の悩み」を描く中で、一つの答えとして「じゃあ、人間が生まれる前の世界に戻るか」という提示をするための道具に過ぎないんってことなんじゃないかと。だから物語での用語の使い方自体には象徴的な意味しかもたないと。
 それをエヴァのファンが厳密な意味や歴史的な解釈と関連付けさせようとしている様は、まさに宗教ができる瞬間ではないかと、面白いかも。

 以下備忘録的に、章立てに沿って特に興味深かったところだけ。
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榊原紫峰 in this beautiful world

 何はともあれ、榊原紫峰(1887年8月8日 – 1971年1月7日)という画家の「青梅」っちゅう作品を見ていただきたい。

 鳥取の足立美術館というところに、行ったわけなのですが、まーとにかく榊原紫峰という方の作品が素晴らしかった。
 このちっこい画像ではとても伝わらないけれども、幹がすっごいしっかり書かれている。血管の浮き出た様はマンガでも、写真でも、絵であっても、異様なエネルギーを感じるもんだけど、植物はソコかと。でもって幹によく付いているコケや、病気のような後、育ってきた過程が目に見える傷なんかも非常に緻密。葉っぱに隠れて日が当たらない葉っぱなんかも!
 会社で行ったツアー旅行だったので、あまり時間はとれなかったけれど、榊原紫峰に張り付いていた。

 美術館でふと耳に入って驚いたのだけど、この「青梅」という作品は40歳前に書かれた作品。このほかにも20代前半の作品が数多く収蔵されており、若いころの作品でもびっくりするほど植物が克明に書かれている。鳥なんかも多いけど、年をとるほど正確に、美しくなっていく。ちなみに、うっとおしいほどの幹表現は、だんだん落ち着いてくる(笑)
 また、この榊原紫峰は京都生まれの戦前戦中戦後を生きた人でもあるわけで。本やらなんやら見ていると、文展やらの派閥争い(?)に巻き込まれた一人でもあるようで。年齢やら時代やら、そんなところも読み解けたら面白いだろうなあとも。
 また、お気に入りの作家を見つけてしまった。

 これならいつでも見に行きたい。誰かまた一緒に行きましょうぞ。実家が近いので宿は無料だぜ(笑)

 自分の話だけれども、私は若冲にしても、宇多田にしても、ごちゃごちゃしたものがすきなんだなあと思う。そしてできれば、ごちゃごちゃの全てを理解したい。いやアホなので無理だけど。
 色々なものの関係性の中で「何か」は一時的に存在するのであって、どれが主役ともなく、全ての中で全てが美しい。そーいう絵を書く人が好きだなと思ってみていた。葉っぱは虫が食われていて初めて落ち着くし。欠点こそがモノの美しさに違いない。そぎ落とした美しさはまだ理解できないのかもしれない。
 憧れじゃなく愛なんだよなあ。

 Beautiful World っつうのは、Love Psychedelico の新曲から拝借させていただきやした。
 もっと美しきこの世界を楽しもうじゃないですか。

『宇宙の声』星新一

 片山若子さん(リンク=渋皮栗)の絵が美しい星新一さんの小学生向けSF中編。「宇宙の声」と「まぼろしの星」という二編が入っている。
 ものすごく読みやすく、「あー宇宙面白そう!」やなと。

 「宇宙の声」では、宇宙に思いをはせるミノル君とハルコちゃんが、急に意識を失い見知らぬ場所で目覚める。
 ミノル君はハルコちゃんをリードしつつ、どうにかこの困った状況を脱しようと努力する。
 と、おっさんが出てきて「きみたちふたりが、初の合格者だ。わたしは宇宙特別調査隊のキダ・マサオという者ですよ」ときたもんだ。先ほどまでの見知らぬ場所は、映像で、どんな行動をとるか試験をされていたそうな。
 そしてこの二人+大人が、ある星から出てくる怪電波(?)の正体を暴くべく宇宙へ出ていく。

「まぼろしの星」では、犬のペロとお散歩中のノブオ君の前に、喋るハトが現れる。
 それを追いかけて、ビルの部屋に入ると宇宙空間が広がる。そしてそこで、お化けクラゲと戦う!
 と、おっさんが出てきて「わたしは、ガンマ星の基地の副所長のフジタです。ある事情で、基地で人をふやさなければならなくなった。しかし、宇宙はきびしいところだ。遊び半分の人間では、なんの役にも立たない。そこで、ひろかに試験をしてから採用する方針をたてた」と。先ほどまでの宇宙空間は、薬で見た幻覚なのだそうな。
 そして、ノブオ・ペロ+大人二人で、狂った計器の原因を求めるために宇宙へ出ていく。

 いやはや、このイントロでぐっと来るわけですよ。
 身の回りで起きる一つ一つの出来事が採用試験かもしれないと。興味を持って探索していたら、「ああ!君みたいな人を求めていたんだよ!」っていう妄想は良くした気がするなー。
 そして、その後いろいろな島に行き、凶暴な生き物に襲われたり、ダメになった大人を目撃したり、文明が作りあげてしまったものと戦ったりしていくわけですな。
 遊園地のために作られた星もあったりして、結構わくわくしながら読める。

 これはぜひとも小学生の目のつくところにわざと放置しておきたいような作品ですわ。
 よかった。

尾崎豊特別展他

人間なんて愛に跪く Love Way

 松坂屋南館で行われている尾崎豊特別展へ行ってきました。
 その前には友人がやっておる大名古屋芸術祭というのに寄って、絵葉書買ったり、乾燥パプリカを手に入れたり。黒にんにくって買ってみたけどなんだこれ。プルーンの味がする。
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